京大岡山3.8m新技術望遠鏡

現在の開発状況


岩室 史英(京大宇物)
京大岡山新技術望遠鏡プロジェクトメンバー   2008年4月
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/abst4.html


● 望遠鏡トラス構造

名大大森研で遺伝的アルゴリズムを用いて最適解を自動設計し、こちらでチェックする
というやり取り中。トラスが主鏡を貫通する部分があるなど、まだ完全ではない。


● 非接触センサ安定性試験

シグマ光機製デジタルセンサ DS-H10

筒型(上図左)の方が薄型(上図左)よりも安定性が良いことがわかった。
可能な限り絶縁して固定することで、長期安定性がかなり良くなる。
下左図は最終的なの試験配置。下右図は2週間の安定性(1カウントは約10nm)。

左図の赤のセンサの2週間の安定性試験(ギャップ 0.3mm 固定)
上から、センサ読み出し値(水色)、温度(赤色)、湿度(緑色)
温度と湿度で補正したものが青色、2週間前の補正係数を用いて温度と湿度
で補正したものがピンク色で、どちらも±50nm の範囲内に収まっている。
この後も補正係数は1ヶ月以上使えることが確認できている。

光学式エンコーダをアクチュエータに取り付け、駆動中のセンサ安定性を
チェックするための準備中。


● 軽量副鏡の設計

超低膨張ガラスセラミックのクリアセラムと、ゼロ膨張セラミックの ZPF の両方に対して
支持点数と構造を変えて変形調査を行い、ZPF の9点支持が最適であるとの結果を得た。

下図は、ZPF 9点支持の軽量鏡の例で、重量108kg, 最大変形量 30nm。


● 位相測定カメラ

セグメント間の位相差は非接触センサーでモニタされるが、センサーの安定性の問題が
あるため、正確な位置は定期的に光で確認する必要がある。2つの鏡の境界部分で集め
られた光は、位相がずれると回折像のピークが2つに分裂することを利用して、Keck
などでは天然の星の光で測定しているが、波面の乱れのサイズ(Fried parameter)が
国内では7cmと小さく、困難が予想される。そこで、新技術望遠鏡ではレーザー自己光源
を用いた測定方法を検討している(下図)。

実験室内で鏡のずれによる回折効果を確認した。

ハーフミラーホルダを試作し、固定・調整精度が十分であることを確認した。


● 研削関係

ナノオプトニクスの研削盤が完成し、現在試験研削中。(φ60cm クリアセラム)

主鏡鏡材は手配済。背面に固定用の凹みをつくる段階。

研削時に鏡材を置く台を準備中。形状測定時には、望遠鏡上と同じ27点で支持する。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp