宇宙物理学教室  学部教育案内


1. 宇宙物理学を専攻しようとする諸君へ  〜履修科目選択についてのガイド〜
2. 宇宙物理学教室・附属天文台が提供する講義一覧
3. 物理科学課題演習C
4. 物理科学課題研究S
5. 系登録について
6. 宇宙物理学教室/附属天文台で行なわれている研究の紹介


宇宙物理学を専攻しようとする諸君へ  〜履修科目選択についてのガイド〜



 宇宙物理学とは、宇宙の様々な場所で起こる諸現象を物理学的手法で記述し、我々の住む自然世界に対する理解をより一層深めることを目的とする学問である。その対象は太陽活動、星・惑星系の形成・進化から、星間現象、銀河の形成・進化、さらには宇宙の大規模構造やその進化を考察する宇宙論まで極めて広い。特に近年は観測技術の発展が目覚ましく、最新の観測データが既存の概念をくつがえすこともある。さらにそれは、新たな理論構築やコンピュータシミュレーションを促し、時には基礎物理学法則自体の見直しすら迫る場合もある。一方で、宇宙における生命の起源といった新しい学問的課題も生まれつつある。宇宙物理学は、近年最も急速に発展しつつある分野の一つと言える。

 このように幅広い分野であるから、必要とされる基礎物理学の知識も古典力学、電磁気学や流体力学から量子力学や原子(核)物理、さらには特殊及び一般相対論と多岐にわたる。従って、この分野を志望する学生には数学及び基礎物理学各分野の幅広い知識の修得が望まれる。また、近年の宇宙物理学の進展は最新観測データによって切り拓かれる場合も多く、観測手法や技術に関する学習も不可欠である。以上のような観点から、当教室では以下のような学部教育を行っている。なお、各講義のシラバスは全学生共通ポータル(https://student.iimc.kyoto-u.ac.jp/)に加え、次のURLを参照のこと。

http://www.scphys.kyoto-u.ac.jp/education/syllabus.html および
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/kyomu/ (このページ)

1回生段階
 宇宙物理学の対象は極めて広いので、 目先の興味にとらわれたり自らを限定することなく、 幅広くバランスよく知識を習得することが重要である。 また、理論と観測が密接に関連した分野であるため、 理論を志す者も観測の基礎知識を習得し、 観測を志すものも基礎物理学をしっかりと学んでおくことが必要である。
 特にクラス指定講義のうち、 微積分学A・Bや線形代数学A・Bなどの数学、 物理学基礎論A・B、物理学実験などの物理学、 および 情報基礎[理学部]、情報基礎演習[理学部] は履修することが望ましい。

2回生段階
 天文学概論 では、現代天文学の方法と、それによって明らかにされている宇宙諸現象を概説し、 どのような未解決問題があるのかについても触れる。観測天文学では、様々な観測手法や技術を紹介し、科学的なデータが得られるまでの過程を概説する。
 一方この2回生段階で、解析力学1・2、電磁気学続論、電磁気学A、振動・波動論、量子力学A、統計力学A、物理のための数学1・2、微分積分学続論I・IIなどの基礎物理学及び基礎数学を修得しておくことが望ましい。これらは、宇宙物理学の研究を行う上で前提となるものである。また、計算機関係の習練も極めて重要である。シミュレーションのような研究はもちろん、観測装置の制御と膨大な観測データの処理にも計算機は不可欠の道具となっている。

3回生段階
 基礎宇宙物理学I・IIでは、2回生までに得られた 基礎物理学の知識を駆使し、宇宙における基本的な物理現象を学習する。 これらは3回生後期(太陽物理学、恒星物理学、惑星物理学)〜4回生(銀河・星間物理学、観測的宇宙論)のより高度で専門的な講義や演習への基礎となる。
 また、量子力学B・C、電磁気学B・C、統計力学B、連続体力学などの基礎物理学(演習も含む)を修得しておくことが望ましい。これらは4回生対象のより高度で専門的な講義や演習への基礎となる。課題演習C1・2・3・4の内容は計算機関連の基礎知識習得と観測実習である。
 課題演習 C1では計算機に関する基礎的な技術・知識を習得し、
 課題演習 C2・3・4ではゼミナールと演習による知識の拡充と観測実習を行う。

4回生段階 専門科目の講義(上述)に加えて、より実際的な研究実習を課題研究で行う。
 S1では主として装置開発的、 S2・3・4では主として観測的、 S5では主として理論的な研究トピックを扱う。




宇宙物理学教室/附属天文台の提供する講義

こちらに。

物理科学課題演習 C


C1 数値計算・シミュレーション
 前期において,計算機に関する基礎的な技術・知識を習得するための演習を行う。数値シミュレーションのような理論的研究はもちろん,観測装置の制御や観測データの処理など観測的研究においても計算機の使用は不可欠である。本演習前半では,UNIX/Linux環境でのグラフや文書作成ソフトの使用法,およびC言語などによるプログラミング法と基礎的な数値計算法を習得する。希望者はさらに,簡単な数値シミュレーションについて学ぶ。本演習後半では理論宇宙物理学を想定し,計算機を用いた簡単な問題演習に取り組む。

後期は、宇宙物理学教室、花山天文台の望遠鏡等を用いて、以下の実習を行う。

C2 観測機器
 簡単な観測装置の製作・組み立てを通じて光学の基礎を学ぶとともに,装置を望遠鏡にとりつけて実際の天体からの情報を取り込み,データ解析することにより天体観測の基礎を習得する。光学実験では,レンズの焦点距離計測・フィルターの透過率測定,検出器試験ではノイズレベルとコンヴァージョンファクターの計測を行い,これらの結果の解析を通して一次元および二次元データの処理方法に関しても習得する。

C3 星・銀河の世界
 星または銀河などの測光撮像観測を行う。観測・データ解析の手法を学ぶとともに,データからどのような物理量が得られるかを学ぶ。扱う内容としては,星団のヘルツシュプルング・ラッセル図の作成とその解釈,変光星の周期の測定とその物理的解釈,銀河の面輝度分布の法則性を探る,などである。内容は年度によるので,ガイダンスでの説明を参照のこと。宇宙物理学教室屋上の望遠鏡などを用いた観測や,過去に撮像された画像を用いた測定などを予定している。標準的な天体画像処理ソフト(IRAF)の使い方や,C言語でのデータ処理,統計言語Rを用いた現代的な数値データ解析の手法についても学ぶ。

C4 活動する太陽
 最も身近な恒星である太陽表面では,黒点領域近傍で突如として大量のエネルギーが解放されるフレア現象や高速でガスが噴出する爆発現象が発生する。これらの太陽活動現象は,地球大気や地球磁気圏にも影響を与えている。この演習では,この太陽活動現象の可視光分光観測,解析,および最新の人工衛星観測データ解析も援用して,電磁流体力学的な物理量を求め,活動現象の成因を探る基礎を習得する。観測は附属天文台で実施する。

 なお,課題演習Cと特に関連の深い講義科目は天文学概論と観測天文学である。

●今年度課題演習向けガイダンスでのスライド●
物理学・宇宙物理学専攻 学部授業カリキュラムのページへ(下部にあり)


物理科学課題研究 S



S1 装置開発
 可視光から赤外線にわたる観測装置が,すばるやせいめい望遠鏡をはじめとする最先端の観測天文学で用いられている。これらの開発に必要な光学,エレクトロニクス,機械工作,真空・冷却,データ取得などに関する基礎的な知識と技術を学び,研究に取り組む。装置を試作し,データ収集を行ってみる。
【履修要件】特になし

S2 太陽物理
 本課題研究では,「太陽観測」と「太陽・宇宙プラズマ理論」とについて,適宜合同で輪講・研究を進める。太陽や宇宙磁気プラズマ現象の基礎物理過程を明らかにするという観点から,初めに基本的な文献を講読した後,具体的な研究をすすめる。太陽観測では,表面の活動現象を具体的に解析出来る唯一の恒星である太陽について,その動的な大気構造と活動現象に着目し,飛騨天文台望遠鏡や人工衛星搭載望遠鏡などで取得された太陽活動現象の最新の観測データを解析する。太陽・宇宙プラズマ理論では,太陽をはじめとする宇宙でみられるプラズマ電磁流体現象について,数値シミュレーションを実施して解析する。
【履修要件】宇宙物理学の基礎となる数学および物理学を習得しておく必要がある。

S3 恒星とブラックホール
 本課題研究では,以下のいずれかまたは両方を柱として研究を進める。(1)最新のX線天文衛星のデータを用いて,ブラックホールなどコンパクト天体における降着流や,活動銀河核の構造の研究を行い,X線天文学の基礎を学ぶ。(2)可視分光観測により,広い意味での恒星の活動現象を調べ,スペクトル解析法を習得する。論文などの講読により基本的知識を修め,その後,実際に観測とデータ解析作業を行う。
【履修要件】特になし

S4 銀河
 本課題研究では,活動銀河核に関して最新の論文の輪講と並行して,公開されているアーカイヴデータの解析やせいめい望遠鏡での観測などにより研究を行う。活動銀河核の活動性に関する基礎知識の学習と,大規模データの扱い,観測データの解析手法に関して習得する。
【履修要件】特になし

S5 理論宇宙物理学
 研究実習に挑戦することで宇宙物理学の理論的研究の最前線に触れ,研究の手法を学ぶと共に宇宙に対するより深い理解を目的とする。前期において,幅広い宇宙物理学の最先端の知見に触れるため,英文教科書をいくつか輪講する。降着円盤や超新星などの高エネルギー天体物理学,惑星科学,恒星進化などの教科書を受講生の希望も考慮しつつ選択する。後期においては研究実習に挑戦することで宇宙物理学の理論的研究の最前線に触れてもらい,研究の手法を学ぶと共に宇宙に対してより深い理解を得ることを目的とする。トピックは主に当教室の理論分野スタッフがカバーする領域(星・惑星系形成や進化,ブラックホール・ガンマ線バースト・超新星などの高エネルギー現象,降着円盤や電磁流体力学・輻射輸送などの天体物理素過程ほか)となる。こちらのテーマも受講生の希望を考慮しつつ決定している。
【履修要件】特にないが,天文学に関する基礎知識の習得が望ましい。

●●課題研究向けガイダンスでのスライド●●
物理学・宇宙物理学専攻 学部授業カリキュラムのページへ(最下部にあり)



系登録について


宇宙物理学教室 (物理科学系 宇宙物理学専門分野)
系登録の定員 (つまり,課題演習C の定員): 

11名

登録のための条件:

系登録の一般条件と同じ。
ただし, 宇宙物理学,物理学,数学から24単位以上を強く推奨。


宇宙物理学教室の系登録における選抜方針

宇宙物理学教室では,定員を上回る学生が系登録を希望した場合,
主として成績をもとに選抜を行なっています。成績評価は以下の通りです。
評価点=推奨科目を含む修得単位数×30+推奨科目の素点(59点以下も考慮)
以下にその選抜方法を説明します。

1. 課題演習C1(前期),C2・C3・C4(後期)については,まとめて「宇宙物理課題演習」として
   選抜を行ないます。すなわち,後期に3つの課題演習のうちどれを希望するかによって
   合否が左右されることはありません。ただし,系登録後に合格者を3つの
   課題演習に振り分ける際に,希望者の多い課題演習では成績上位者を優先
   し,受入最大人数をオーバーした学生には第一志望以外の演習に回ってもらいます。
   C2・C3・C4の受入最大人数はそれぞれ,約4〜5名です。
   なお,後期の演習科目の変更を希望する場合は,
   8月末までに学部教務担当の教員に連絡すること。

2. 原則として,成績のみで選抜します。
   その際考慮する成績とは,
       a. 総単位数
       b. 宇宙物理学教室が推奨する科目の履修状況(推奨科目とは,このページ
         最上部「履修科目選択についてのガイド」に挙げられているものを指す。)
       c. 各履修科目の成績(宇宙物理学教室の推奨する科目を重視)
   の総合で,以下の式により計算します。
    評価点=推奨科目を含む修得単位数×30+推奨科目の素点(59点以下も考慮)


宇宙物理学教室/附属天文台で行なわれている研究の紹介

こちらにあります。