Changing Look Quasar
― AGN 活動の臨界点 ―

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/CLQ/

岩室 史英 (京大宇物)


●活動銀河核(AGN)

    Broad Line 有だと Type 1 無しだと Type 2


    https://ned.ipac.caltech.edu/level5/March18/Hickox/Hickox1.html

    一般的には、Type の違いは中心部を見る方向の違いで説明できる(統一モデル)


http://svs.gsfc.nasa.gov/10698/

●Changing Look (CL) 現象

    AGN の type が変化する現象。近傍の AGN では幾つかの天体で古くから CL が確認されており、dust cloud の隙間から中心部が見え隠れすることで説明できた


    Penston & Perez 1984, MNRAS, 211, 33

    BH 質量が10倍以上大きい遠方の Quasar で、数年で CL 現象が起こっている
    → CLQ: 隠すべき部分のサイズが大きく数年では無理、赤化量も合わない


    MacLeod et al. 2016, MNRAS, 457, 389

●CLQ サーチ

    赤化量の変化でなく、降着円盤の状態そのものが変化している可能性が高い
    CLQ の数を増やし CL 中のスペクトルの変化を詳しく調べることが重要
    → CLQ をどうやって探すか?

  • 測光サーベイ
    太陽系内の移動天体や変光星・超新星などの研究目的で公開されているもの
    数年で 1mag 以上明るさが変化した天体が CLQ 候補となる

名称望遠鏡口径期間範囲備考
SDSS S822.5m2000-2008赤道付近 300□°領域が狭い
CRTS21.5m等3台2005-2014全天フィルター無し
ASAS-SN0.14mx202017-全天非常に明るい天体のみ
ZTF1.22m2018-北天1.7TB/年でデータが増加
    大きく変光した天体の内 CLQ は 1% 程度で、これだけで探すのはかなり大変

  • 分光サーベイ
    分光は測光ほど何度も行うことができないため、多くても数回まで

名称望遠鏡口径期間範囲備考
SDSS I-III2.5m2000-2014北天2回分光が多数
LAMOST4m2011-北天Quasar 少ない
DESI4m2020-北天2026年までに北天全域
    CLQ を確実に検出できるがデータの公開が遅いためこのデータで探すのは手遅れ

  • 変光タイプの解析
    中心核付近が見えている Type 1 AGN は random walk 的な変光をする
    "random walk 度" を数値化することで Type 変化を検出する


Wang et al. 2024,ApJ,966,128

    検出成功率は80% だが、変化の初期で検出するのはなかなか困難

●Quasar の主系列から見た CLQ の性質

    Quasar のスペクトルには大きく分けて2つの種類がある。

  • FeII 強、[OIII]弱、FWHM(Hβ) 小~中(下図上)
  • FeII 弱、[OIII]強、FWHM(Hβ) 大(下図下)


Sulentic et al. 2007,RMxAC,28,83

    Quasar Main Sequence

  • RFeII=FeII/Hβ と FWHM(Hβ) との関係
  • 右ほど [OIII] 弱い
  • 下(右)ほど質量降着率大、CIV アウトフロー強い
  • 上ほど Radio loud 率大きい
  • CLQ は上(左)に分布


Marziani et al. 2018,FrASS,5,6

    右下が Quasar 成長期、左上が成熟期と考えると、CLQ は断末魔の状況?

●Hot Spot

    BLR の活動状態が大きく変化した天体で disk の一部が光っていると思われる事例

Logan et al. 2023,ApJ,948,5

    せいめい望遠鏡+KOOLS で同様な事例を CLQ で検出
    (下図は Narrow Line 差し引き後の Broad Hβ 輝線を 相対論効果も含めた disk 状 BLR + Hot spot モデルで fit したもの)

    通常の Quasar でこれらのような "Hot Spot" の検出事例はない
    Hot Spot は CL 中に出現しやすい可能性もあるので、せいめい望遠鏡で調査中


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp