センサ安定性試験9
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/sensortest9.html

岩室 史英 (京大宇物)


●予備アーム試験 その2

    センサ安定性試験8から約1年経過して、ようやく恒温槽の修理が完了したので(結局、制御基板の交換で完了)残り2個(41,34)のアームの試験を再開。

    34の参照センサの時間遅れが負の値になってうまく解析できないので、温度ロガーのデータを 1500sec 先行させて解析した(温度計プローブの置き位置が悪かったか...)。


    前回の最後辺りでは 34 の測定センサが変だったが、現在は 34 の参照センサが変。このセンサのケーブルを交換し、34 と 41 の位置を交換して再開。


    う〜ん、やはり 34 番の参照センサの挙動が怪しい。再度位置を入れ替えて計測再開。


    今度は正常になった。今回も34番の参照センサが温度計よりも先行して変化するため、 温度ロガーのデータを 1500sec 先行させて解析している。恒温槽内部で、風が直接 当たらないように箱で覆っているのだが、隙間風が入るようでそれが常に当たる部分が 参照センサ位置になっている感じだ。箱に隙間ができないようにケーブルを通す位置を 変更し、再度位置を交換とともに対向板との距離を少し離して再開。


    今回は41番の参照センサが先行して変化するので 1500sec 加算。どうやら温度計 プローブの置き位置よりも対向板の上辺りの場所がかなり早く変化するようだ。 結果は正常なので、次のセットで最後の2個もパラメータ測定が完了できそう。


    今回は34番の参照センサが先行して変化するので 1500sec 加算。とにかく、色々変えても 箱内部では温度勾配が発生しているようだ。箱の外側で風の当たる場所がいつも同じ なので、箱のその部分に近いところから温度変化するということなのかもしれない。

    前回の結果と併せて補正係数を plot してみる...(下図 a-d は昨年、e,f が今回の結果)

    前回も、この2つは安定した結果が再現されなかったが、今回も今の所標準的な温度依存関係とは異なる振る舞いをしている。もう暫く計測を続けるしかない...

    4回前と同じ状態で再度取得してみる。


    やはり、41番の変換係数は 1.8 程度とかなり大きい。対向板無しの状態は現在は横置きにしているが、できるだけ同じ状態で対向板有り/無しの測定を行うために、下写真右のように対向板無しの場合もロッドに固定した状態で計測する事にした。これでもう暫く様子を見る。


    とりあえず、34番の方だけが状況が少し変わったが、基本的にはそれほど変化はなさそうだ(最後の方がおかしいことに後になってから気づいたが)。41番の方の対向板を外して再度様子を見る。

    う~ん、またしても恒温槽のトラブルが発生した。と思ったが、恒温槽の業者の方に「結露は大丈夫ですか?」と言われて、恒温槽裏側の排水配管から大量の水が出ているのを発見した。手動でデフロストして全ての水を抜いたら正常に戻った感じ。あまりに連続運転させすぎたか... というわけで1つ前(最後が変だったもの)の状況に戻して試験を再開。


    う〜ん、状況は変わらず対向板がある場合には標準的な 1.3 付近からかなり離れた値が出ている。参照センサ同士の特性はほぼ同じ感じだ。41番を対向板から外し、34番を対向板に向けて継続。


    こう見ると、41番計測センサ() の振幅が大きく変化していて、他とはかなり異なる振る舞いをしていることがわかる。ケーブルの可能性を考えて、41番と34番の計測センサのケーブル同士と参照センサのケーブル同士をそれぞれ交換して同じ状態で計測してみる。


    ケーブルを交換して41番の計測センサが不安定になったが、基本的にはあまり変わらないようだ。次に疑われるのはセンサの接着時に、接着剤が間に入り込んでいないかということだが、とりあえずは2つ前の状態に戻してケーブル交換の影響を引き続き確認する。


    う〜ん、どうやってもこの2個のセンサの振る舞いが標準値から外れている状況は変わらない感じだ。参照センサ同士の特性は揃っているので、両方の計測センサを一度外して再接着してみる。


    何と、センサの温度特性が全然変わって別物になってしまった。温度特性の違いは、どうやら接着時にどの程度ストレスが溜まっているか、どの程度の量の接着剤が使われたか、など、接着時の状況が関係するようだ。接着剤はまだある程度の弾性が残っている状態で、1週間程度で徐々に固化が進むため、もう暫く様子を見る必要はある。


    う〜ん、34番の方は接着前と似たような感じで対向板ありの場合の factor は小さいままだが、41番の方も似たような感じになってしまった。接着剤の性質がまだ変化する可能性もあるので、とりあえずは継続。41番と34番の位置を入れ替えて、41番の対向板ありの時のカウントを少し減らした。


    やはり41番の補正 factor は小さいようだ。とりあえず41番の対向版を離し、34番を対向板に正対させて継続。


    34番のこのカウントでの補正係数は、再接着前と変わらず非常に低い値のままだ。34番に関しては、再接着の作業前後ではほぼ特性に変化が無いことが確認できた。最後の可能性として、センサの制御回路の影響を確認してみる。制御回路 box のコネクタを 1,2 と 3,4 を入れ替えて同じ状態で計測再開。今後はが34番、が41番となる。


    制御回路のコネクタを差し替えただけだったのだが、41番の前半が不安定になった。それ以外は、大体同様な結果が得られているので、制御回路の影響は低そうだ。34番を対向板から離し、41番を対向させて継続。


    1,2 と 3,4 が入れ替わっているだけで3つ前と同じ結果になったので、制御回路はやはり関係ないということが確認できた。計測センサそのものを別のものに交換してみる。

    この2つのセンサに、見かけの特徴がないか調べてみた。特に気になるような部分は無いが、基板の端に欠けが見られた。こういうセンサは他にも多くあると思われるが、とりあえずメモ程度ということで記録しておく。

    計測センサを交換して接着、2日経過してから計測したものが以下。


    何と、2回前と同様な感じとなっている。この2つの温度特性の異常は、センサでもケーブルでも読み出し回路でもないという可能性が高くなった。だとするとクリアセラムのアームそのものか、センサアーム下のインバーのベースの問題という事しか思いつかないが、センサ再接着で特性が変わったということを考えると、センサ基板とアームの膨張率にほんの少しの違いがあって、それが接着状態の違いによって異なる温度特性として現れている可能性がある。先にベースの影響の可能性を確認するために、ベースの向きのみ180°回転させて計測を継続する。


    う〜ん、かなり状態が変化してどちらのアームもほぼ正常値を出すようになった。このインバーの台座はセンサ安定性試験8で5本の予備アームの計測に使っているので、台座そのものに何らかの特性があるとは考えにくい。だとすると、台座の上下どちらかにゴミが挟まっていて、それが外れたという可能性はある。再度台座を180°回転させて通常の方向(3本脚の内の2本がある方がアームの伸びている側)に戻し、接触面をよく掃除して計測してみる。


    やはり、掃除をしても2回前と同じ結果で、インバーの台座を180°回転させると41番のセンサは対向板との距離が変わって補正係数が変化した、という事のようだ。しかし問題なのはその係数のカウントに対する振る舞いで、少しの距離変化で正常な係数値から異常な値に変化するので、距離に対する補正係数の変化パターンが典型的な振る舞いからかなり外れている感じだ。しかも、センサを交換してもその性質は変化しないので、アームそのものがおかしいという感じになってきた...(アームとセンサの膨張係数に違いがある?)

    41番を対向板から離し、34番を対向板と対向させて継続する。


    34番に関しても、センサ交換前と同様な値が確認できたので、やはりセンサの問題ではなくアームの問題の可能性が高くなった。ここまでの状態を整理すると、

    h,i がセンサ再接着後、j,k がセンサ交換後の状態(但し k はこの次の試験結果)。再接着により、41番は一応許容範囲内の振る舞いになっていたようだ。対向板までの距離を入れ替えて計測を継続する。


    41番は正常範囲内に入っている感じなので大丈夫そう。34番でカウントが大きい時の振る舞いが問題なので、34番を対向板に近づける次の結果が重要。


    やはり、非常に小さい値となった(上図に 41k,34k を追加した(34k は欄外だが...))。センサ交換前と同じ状態が再現されたことになるが、気になるのは 34番の delay が非常に大きくなることだ。交換前の近い方の対向板の場合(34i)でも、同様に非常に大きい delay となっていたので、最高温と最低温での温度維持の時間は1800秒であることを考えると、少なくともこれよりも長いor近い delay (計測センサと参照センサの delay 差)はセンサが平衡状態に到達しておらず、これが補正係数の異常値と関係している可能性が高い。測定位置(手前のロッドか奥のロッドか)が関係している可能性があるので、スペーサごと手前と奥を入れ替えて同じ状態で継続する。


    やはり、delay が1000秒を超え、その分係数が小さくなる(ある程度は大きくなったが)。遡って調べてみると、どうやら補正係数の温度特性関数を導出した際に用いている4つのセンサの内の3つでも、対向板距離が小さい場合に同様な影響が出ている感じだ。接着の状態などでアームとセンサ間での熱伝導率に違いが生じ、その影響が出ているということか。恒温槽の温度サイクルの周期(11時間)は変えずに、最高・最低温での温度維持時間を30分から1時間に変更して同じ状態で継続してみる。


    う〜ん、ほぼ結果は変わらず、非常に小さい値だ。delay もほぼ同じで、今度は最高・最低温度での滞留時間(1h)よりも十分に短いので、滞留時間30分でもギリギリ測定できていたということになる。34番が近距離でなぜ通常値よりもかなり小さい値となるのか、原因は不明のままだ...

    温度変化をもっと極端にして、30分で変化、5時間維持にしてみる。


    5時間も維持しているのに、意外と温度は収束していなかった。内部に入れたクリアセラムの塊が大きすぎるとか、振動を切るために入れている発泡スチロールの保温効果の影響だと思われるが、今更なので仕方がない。変換係数は結構変化したが、過去の計測との整合性はよく考える必要がある...

    とりあえず、対向板と対向させるセンサを41番の方にして計測を継続。


    delay がそれほど大きくなかった41番の方も、係数が大きくなった。う〜ん、これまでの計測は、変換係数を過小評価していた事になるのか...

    41番と34番の位置を入れ替えて計測を継続。


    34番の係数は少しだけ大きくなった。対向板に正対させるアームを34番から41番に変更して継続。


    41番の補正係数が今度は大きい側に変化した。変化の曲線形状が合わないこともあるが、delay が小さくても影響が出るのか? いまいち理解が難しい振る舞いだ...

    温度維持5時間の場合の結果が以下。かなり違った結果となっているが、補正関数が破綻するレベルのものではない感じだ...

    delay の影響がある程度あることは確認できたが、34番の振る舞いが特殊である状況は変わりない。とりあえず、恒温槽の制御を温度変化5時間、保持30分の初めの状態の戻して、41,34番ともに対向板に向けて状態の確認。


    う〜ん、両方のアームが平行に並んでいるせいか、変化の形が合わない... その影響か、41番、34番ともにかなり大きい補正係数が出ている。多くのアームを同時に計測していた際には全てこの状況で取得していたので、アームが平行か平行でないか程度の違いでも影響が出るのかどうかをちゃんと確認する必要がある。しかし、ダンボールなしの状態でどうなるかの確認を始めてしまったので、上記の確認はそのあと。


    形が全然合わないが、少なくとも41番の係数は大きい感じだ。とりあえず34番の方を対向板に向けて継続。


    これは正常値。41番と34番の位置を入れ替えて継続。


    やはり41番は大きい値が出る。34番の方を対向板に向ける。


    34番の方は正常値だ。う〜ん、試験の方法により対向板に向いている状態での結果がかなり変動することがわかった。

    ここまででわかった傾向としては、補正係数が大きく出る場合は計測センサと参照センサのカウント変化の形が合わず、残差が大きくうねる状態となり、逆にこれらの形状が合う場合は残差が非常に小さくなるようだ。温度変化を早めると形状の不一致となり、遅くすると delay が伸びて平衡に達する前に温度制御が反転して振幅に影響が出るということか。非常に時間がかかるが、5時間温度変化、30分保持という制御を時間を2倍に伸ばして10時間温度変化、1時間保持で試してみる(箱に入れた状態で)。



    う〜ん、箱に入れずに測定した場合と同じ結果となった。41番と34番の位置を入れ替えて継続する。

    う〜ん、今度はセンサ不安定と温度計異常で連続失敗。


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