センサ安定性試験8
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/sensortest8.html

岩室 史英 (京大宇物)


●予備アーム試験

    センサ安定性試験7から4年経過し、幾つかのセンサが故障して予備アームが減ってきたため、余っているセンサで交換して予備アームを準備、それらのパラメータ計測のために再度恒温槽試験を行なうこととなった。センサの台座は、4年前の試験終了後に接着を剥がす際に破損させてしまったため、現在、望遠鏡で用いているものと同様なスーパーインバーでの台座を2個準備し、これで計測することにした。

    とりあえず、恒温槽に入れて試験を始めてみる。風が直接当たると結果が安定しないはずだったので、全体を箱に入れて恒温槽の振動を遮断する緩衝材の上に置いてみた。ケーブルはまだまだいじることが多いと思い、とりあえずは固定せずに開始。

  • とりあえず試験
    始めてみると、3番がおかしい(下図左)。3と4のケーブルを交換したら症状が4に移動したので、ケーブルが原因であることは確定だ。4番のケーブルを予備のものと交換して確認を繰り返すが、素性の悪いケーブルしか残っていないようで(余っているものは過去に1度でも問題を起こしたものばかりなので...)、何度変えても良い物が見当たらない。やっと使えそうだと思ったものも、1日試験すると問題が出てくる。そうこうしている内に2番にも問題が発生したが(下図右)、こちらはかなりの期間安定していたので、とりあえずはコネクタの差し直しのみで対応してみる。
    木野くんより、接点洗浄をしてみてはとのアドバイスがあったので、コンタクトスプレーで問題のあったケーブル全ての接点洗浄をし、これら8本全てを一斉に検査した。その結果、問題なかったのは一番初めから使っていたものを含む2本だけ(下図 7,8 番)で、他6本は接点洗浄でも回復しないということが確定した。とりあえあずは、初めに使っていた1本を元に戻し、測定を開始する。ここで、以前の試験では奇数番が計測用、偶数番が参照用のセンサだった事に気が付き、とりあえず読み出し box 部で奇数と偶数を入れ替えて差し直した。が、今度は1番(ケーブル番号は2)に問題が... 1番と8番(ケーブル番号は7)を接点洗浄してやり直し。

    ようやく問題なくデータを取得することができた。まずはアーム番号 41,43,73,74 の順で奇数番号に計測センサ、偶数番号に参照センサを接続して計測した結果が以下。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。73の参照センサは若干挙動が他のセンサとは異なる感じだ。



    41,43 と 73,74 の位置を置き換えて取得した結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。73の参照センサは正常になった感じ。ケーブルの差し替えはどこもしていないので、ケーブルの位置の問題だったということのようだ。



    23,32,34,73 の結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。73番の参照センサはやはりややおかしい感じだ。



    23,32 と 34,73 の位置を置き換えて取得した結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。73番の参照センサは再び正常になった。ややおかしい振る舞いをしている場合でも、実際の運用時にはほぼわからない程度(〜0.1μm)の挙動なので、このままで特性確認試験は終了とする。また、この実験の間に台風が通過し気圧が大きく変化したが、センサには全く影響ないことが確認できた。固定されているアームの参照センサと、固定されていない対向板なしのセンサとの相性が悪いが、同一アームの参照センサとの相性は問題ないのでこれは気にしない。恒温槽の振動が関与しているのではないかと思う。



    上記からカウント - 補正係数をチェックしてみる。34,41 番は対向板なしの状態と比べて、対向板ありの場合の結果のずれが大きい。32番は補正係数が大きいが、対向板の有無に関係なく大きいので、参照センサの温度変化の影響が他よりも小さいということのようだ。32,34,43,41 の順で接続して対向板間隔が異なるデータで確認してみる。

    32,34,43,41 の結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。34番はスペーサの脚にゴミが挟まった可能性がある...



    32,34 と 43,41 の位置を置き換えて取得した結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。狭い方の対向板のセンサの振る舞いが今回も変。何も挟まないようによく掃除をして固定したのだが...



    この結果をカウント - 補正係数関係に追加したものが以下。32番は参照センサの温度変化が小さく、43番はその逆という感じだ。対向板なしの状態との補正係数の違いはどちらも 20% 以内に入ったため、この2つに関しては較正完了とし、結果が安定しない34,41(特に34は2種の対向板でのカウント差が明らかに小さいので、カウントからも何か挟んだ可能性が疑われる)と1セットの計測しかしていない23,74で再度計測を行なう。

    41,34,74,23 の結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。



    41,34 と 74,23 の位置を置き換えて取得した結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。



    74,23 は問題なしだが、41,34 の結果が全然安定しない。再度位置交換して確認。

  • 計測された 23,32,43,73,74 の係数表
    適用の仕方はこちら

    34,41,23,74 の結果。その下の4つは、4つの参照センサの1つのみを参照センサとして残り7つのセンサの温度補正をしたもの。間隔が狭い方のスペーサはまたなにか挟まった感じだ。固定前には養生テープでペタペタして埃が残らないようにしているのに、いつも同じスペーサが問題となっていることから、固定ネジ接着の際の接着剤とスペーサが接触しているような気がしてきた。



    34,41 と 23,74 の位置を置き換えて取得した結果。恒温槽が故障か?... 前半の試験がうまく行かなかったということもあり、一旦ここで中断、34,41 以外の5つは終了とする。


    恒温槽の放熱板の掃除などもしてみたが、どうやら故障のようなので業者に連絡してみる...


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