センサ安定性試験1


シグマ光機製デジタルセンサ DS-H10 について、挙動不安定な現象が起こる原因を調べてみる。当初は問題なかったはずだが、どこからおかしくなったのか?


その1

とりあえず、坂井くんがやっていた状況のまま、挙動不安定の確認。
出張中に1週間測定を続ける。10万ループ(約2.5日)で出力ファイル名を変更しているが、測定は連続して行っている。グラフ下半分は拡大図で、始めの値で揃えたプロットと終りの値で揃えたプロットを同一の座標軸で表示しているため、始めと終りの値が近い場合は平行移動した同一のグラフが2つプロットされる。また、温度や湿度もサンプルしているが、補正はしていない。縦軸はカウント値のままで、1カウントは約10nm程度である。



     10万ループ = 約2.5日、1カウント = 約10nm


その2

不安定なままなので、やや効果の見られたシールドを試してみる。
センサ部分を金属箱に入れて様子をみる(左図 94000ループ目付近以降の部分)。
若干良くなったかな?という程度だ。



     10万ループ = 約2.5日、1カウント = 約10nm


その3

まさかとは思うが、3つのセンサを同架しているのが問題かと思い、2つのコネクタを抜いてみたところ、見事に的中(図 3000ループ目付近以降の部分)。サンプルは個々のセンサに対し別々の時間に行われるので、同架しても大丈夫と思っていたのが落し穴だったようだ。センサ部分は接触していないので、グラウンドループができている訳ではないと思うが、何が原因なのか?



     10万ループ = 約2.5日、1カウント = 約10nm


その4

もうひとつの可能性として、同一の表示器で連続して複数のセンサのサンプリングを行うこと自体に問題がある可能性がある。とりあえず別な治具に1つのセンサを移し、わざとグラウンドは接続しないで様子を見る(図 55000ループ目付近以降の部分)。若干、不安定になっている様子が見受けられる。



     10万ループ = 約2.5日、1カウント = 約10nm


その5

更に、別な治具の方にもグラウンドをつないで様子をみる(左図 8000ループ目付近以降の部分)。始めは不安定かと思われる部分もあり、シールドしていない方は20カウント弱のジャンプが1度発生したものの、最終的にはほぼ安定した(最後の方は土日なのでその影響もあったか?)。



     10万ループ = 約2.5日、1カウント = 約10nm


その6

その5でつないだグラウンド線を長いものにとりかえ、更にセンサ+グラウンドをもう1対追加してみる。ネットワーク関係のトラブルなどあり、その5とその6の間には約2日の時間間隔が入った。青が特に安定している原因として考えられるのは、センサの特性か、グラウンド線が短くまっすぐであることか、対向金属の質量が大きい事程度。特に目立ったジャンプはないが、赤の状態がかなり変化してきている。グラウンド線が長いことが原因の可能性が高い。この回からなぜか1ループに時間がかかるようになった(100000ループで約3日)。ソースは一度変更して結局元に戻したはずだが...



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その7

他のチャンネルの駆動の与える影響を確認するため、配線状況は変えずに緑のセンサのみ読み出しをしてみた(読み出しはその6から連続している)。振舞いは変らず、対向金属を共有せずに正常に接続すれば他のチャンネルの駆動状態には影響されないことが確認できた。その5 の前半(8000ループ目以降)に見られる若干の不安定はなんだったのか? 左図88000ループ目付近のところで、緑のセンサのグラウンド線をまっすぐにし、読み出しをしていない赤のセンサのグラウンド線を同程度の長さの同軸ケーブルに交換してみた。まっすぐにしたグラウンド線が動いているのか、少なくとも半日は緑が落着かない状態になっている。


     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その8

上図88000ループ目付近のところで、緑のセンサのグラウンド線をまっすぐにし、読み出しをしていない赤のセンサのグラウンド線を同程度の長さの同軸ケーブルに交換している。この状態のまま、その7から連続して測定。グラウンド線を同軸にした赤のセンサはかなり不安定。シールドを表示器フレームに接続した(配置図中の1)が、これグラウンドと同一なのが問題か。あまりにひどいので、左図75000ループ目付近で同軸のシールドを表示器フレームから外してみた(配置図中の2)。それでも状況は変らないので、右図7000ループ目付近で同軸のシールドをトラスに接続してみた(配置図中の3)。その6ではグラウンド線の状態を変えたあと、緑のセンサが落着くのに2日半かかったが、今回も同程度かかった。93000ループ目付近で同軸ケーブルの使用をあきらめ、100V電源用の太いケーブルに交換した。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その9

上図93000ループ目付近のところで、赤のセンサのグラウンド線を更に長い100V電源用の太いケーブルに交換している(但しかなり長い)。この状態のまま、その8から連続して測定。状態は更にひどくなったので、21000ループ目付近で赤と青のグラウンド線を交換してみたところ、落ち着いた。しばらくおき、中図930000ループ目付近のところで再び赤と青のグラウンド線を交換してみたところ(その9始めの状態に戻す)、少し暴れた後落ち着いた様にみえる。何が原因なのか?(右図で2度ジャンプがあるのは、ケーブルなどを触ったため)



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その10

この週は海外出張だったため、その9以降1週間ほったらかし。後の方になると落ち着いてくるが、温度や湿度との関係をチェックする必要がありそう。左図で赤のみ特性の逆転が見られるが、その9最後で急激にカウントが降下した反動である様にも感じられる。グラウンド線が太くて長いのが原因なのか?


     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その11

グラウンド線の太さの影響を見るため、その10最後に緑と赤のグラウンド線を交換した。やはり赤は急激に下降して徐々に戻ってくる。グラウンド線の太さは関係なく、赤のセンサのみの特性のようだ。こういうものがどの程度の頻度で混ざるかが気になる。また、赤センサの変動が他のセンサにも影響を与えているようにも見える。最後の部分の変動に関しては、その12参照。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その12

その11の最後の方で、青のセンサを薄型の DS-H10F に取り換えてみた。全然安定しないが、絶縁等の問題か?



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その13

左図5000ループ付近で青のセンサを同タイプの別なものに取り換え、同時にセンサ保持部と対向板の絶縁をしてみたが、似たような状況。なぜカウントが上がる一方なのか?



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その14

その13最後の図の90000ループ付近で青のセンサを保持治具から外し、ビニールで絶縁して対向板と重りで重ね合わせた(センサ・対向板とも変ていない)。これまでよりはましになったが、今度はカウントが下降し始めた。間に狭んだビニールが圧縮されて縮み続けている可能性もあるが、薄型の DS-H10F は、安定性が今一つなのかもしれない。かなり経ってから変化の傾向が揃ってきたが、青のセンサだけはやはり少し挙動の様子が違うようだ。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その15

対向板のグラウンド線を再び外してみる。その4ではグラウンド線を外した時に不安定な状態になったが、今回は大丈夫そうだ。センサ固定部分が対向板と電気的に絶縁されていることが重要だということがわかった。どれくらいで安定するのか暫く様子をみる。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その16

赤のセンサも青のセンサと同様に薄型の DS-H10Fに置き換え、グラウンド線を外した対向板と治具を使って固定した。ベースにはクリアセラムの塊を使ってみた。最後の方で全てのカウントが1日以上かけて一斉に変動しはじめたが、湿度が 10% 以上変動していることが原因と考えられる(下図一番最後の図参照)。




     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その17

表示器本体を端子架のグラウンドにつないだ(左図10000ループ目付近)が、数日経てば似たような状況になった。配線を変えると安定するまでにいつも数日かかってしまうのは、ケーブルが原因?(だとしたらちょっと問題かも)



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その18

赤のセンサの安定性が青のセンサよりも悪い原因を調べるため、表示器につながるコネクタを赤と青で交換してみた(左図 43000 ループ目付近)。やはり赤のセンサの方が安定性が悪いので、表示器側の問題ではなく、センサ側の問題のようだ。また、下中図で不安定さが一層増しているが、急激な湿度変化が原因(下図右)。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その19

緑のセンサを入れている金属箱のふたを外し(17000ループ目付近)、安定性に変化があるかどうかを調べてみた。湿度変化が大きく分かりにくいが、それ程変わらないように見える。その18で表示器のチャンネルを変更してから青のセンサにスパイク状のノイズが入るようになったのが気になる。右図75000ループ目付近で、表示器を端子架グラウンドから切離し、再び浮いた状態に戻してみた。



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その20

その19最後の図75000ループ目付近で、表示器を端子架グラウンドから切離し、再び浮いた状態に戻して青のセンサのスパイク状のノイズに変化があるかどうか様子を見たが、益々ひどくなるようなので、左図33000ループ目付近で表示器のコネクタを赤と青で再び交換してみた(その16とほぼ同じ状態に戻ったはず)。スパイク状のノイズは消えた。表示器とセンサに相性があるのか?



     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm


その21

赤のセンサは安定性がいつも良くないので(固定の仕方に問題のある可能性もあるが)取り外し(下左図32000ループ目付近)、以前テストしていた円柱形状のセンサ(その15まで赤のセンサとして使っていたもの)を再度取り付けた。但し対向板は接地していない。下段右図57000ループ目付近でケーブルを触るなどし、同じ図 82000ループ目付近で配置をその22のように変更した。




     10万ループ = 約3日、1カウント = 約10nm

その21、2週間分のデータを環境補正したものを以下に示す。左から順に 青、緑、赤 のセンサを補正したもの(水色:生データ、ピンク:ジャンプ補正後、青:環境補正後)。赤だけは非常に良く補正できている。対向板をGND線で表示器に接続していないことが安定している原因と思われる。他はぎりぎり許容範囲か。


その22

赤のセンサの補正結果が良かったので、全て赤のセンサと同様に接続、様子をみる。下左図 95000ループ付近で停電となり、1日中断が入った。停電後は、各読み出しの間に 10msec の間を取るようにしたので、100000ループまわすのに3.5日かかるようになった。数値は上がる一方だが、気温が下がり続けていることが原因だと考えられる。




     10万ループ = 約3.5日、1カウント = 約10nm

その22、2週間分のデータを環境補正したものを以下に示す。左から順に 青、緑、赤 のセンサを補正したもの(水色:生データ、ピンク:ジャンプ補正後、青:環境補正後)。その21に比べ安定性は増しており、絶縁体の上で試験を行ったことが効いているものと考えられる。やはり、薄型の青の安定性がやや落ちるが、狭んでいるものが他と異なることが原因の可能性もあり、同じものに変更して様子をみる。


その23

青のセンサと対向板の間に狭んでいるものをたの2つと同じプラスチック板にし、赤と青のセンサの対向板を取り換えた(片方はセンサ附属の金属板、もう一方はクロムメッキした鉄板)。




     10万ループ = 約3.5日、1カウント = 約10nm

その23、2週間分のデータを環境補正したものを以下に示す。左から順に 青、緑、赤 のセンサを補正したもの(水色:生データ、青:環境補正後)。かなり安定してきている。ピンクの線はその22 の補正係数を用いて補正したもの。青、緑のセンサは良くないが、赤のセンサは対向板を変えたにもかかわらず良く補正できていた。緑のセンサは、その22に比べて温度の補正係数が大きすぎ、その22の係数を用いた方が凹凸が少くなる。

上記2週間分の補正係数を用いて、その続きのデータを補正してみる。水、黄、桃 がそれぞれ 青、緑、赤 のセンサを補正したもの(緑だけはその22の係数を利用)。薄型のセンサ(水色)は2週間程度で補正後の値が10nm以上ずれてしまったが、他のものは3週間経っても同じ補正係数で補正出来ているようだ。







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