センサ取り付け作業  

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/sensor_install.html

岩室 史英 (京大宇物)


●望遠鏡へのセンサの取り付け

セグメントを裏側から見たセンサアームの配置図

アーム番号とスペーサ番号の関係

アーム番号スペーサ番号アーム番号スペーサ番号
01-06I1-I6 S-RI-231-36O7,9,11,13,15,17 S-IO-2
07-12I1-I6 S-II-137-42O8,10,12,14,16,18 S-IO-2
13-18I1-I6 S-II-243-54O7-18 S-OO-1
19-24I1-I6 S-IO-1A55-66O7-18 S-OO-2 (上下反転)
25-30I1-I6 S-IO-1BL1-L6(R1-6 S-RI-1)

下左写真のような感じでセンサアームを固定していく。ネジが外れて軸が飛んでもセンサアームとスペーサが落下しないように、テープで繋がっているようにする。幾つか取り付けてみたところ、一番外側のセンサと対向板が平行になっていない事が発覚。

一番外側の12個のみ、アーム下のスペーサが裏返しに作られている事が判明。逆さまにしてとりあえず取り付け。

内周セグメントから外周偶数番のセグメントに出るアーム(25番~30番)のスペーサが厚すぎて、対向板との間隔が 8mm 近く空いている事が判明(計測したのは25番と29番の2ヵ所のみ)。

今後の方針は以下の通り

  • 主鏡の光軸方向の位置を星のフォーカスで大体合わせる
  • センサと対向板の間隔をできるだけ多く計測
  • 現在のスペーサ設計で反映されていない対向板側のセグメントの厚さや、その他発覚した上記の問題などを反映させた設計値と比較して整合性のある状態と判断できれば、全てのスペーサを新しい設計値で修正加工
  • 新しいスペーサを用いて取り付け
これと並行して、内周リング周辺に関して以下を進める

  • 内周リング側から出ているアームを、現在の対向板との実測値を元に 3.8〜8.7mm 安価な鉄スペーサでかさ上げ
  • 内周リング側に取り付ける対向板接着ベースを実測値を元に設計・インバーで製作
  • 全て組み上げて問題ない状態になったら、鉄スペーサをインバーで再設計・製作して交換
というわけで、センサと対向板の間隔をできるだけ多く計測した結果が以下。「ない」は現場でスペーサが見当たらなかった(多分京都に忘れてきた)もの。数字がない所5箇所は、アーム取り付け時に固定ネジが外れて再接着となったもの。

過去に判明したスペーサの修正量を用いてスペーサを修正加工した場合の間隔予想値は以下の通り。

設計は間隔 0.5mm となるようにしてあるので、全体から 0.5 を引いて目標間隔とのずれにすると...

現時点で、各セグメントの向きは大体合っているものと思うと、このずれの原因は光軸に沿ったずれ(ピストンずれ)で説明できるはず。正しい結果を出すには18変数での最小2乗の計算が必要だが、とりあえず互いに腕を出し合っているペアの差の半分がピストンずれで、平均値がピストン調整後に残るずれ量となる(正確にはその下限値)と考えてペアの平均値を計算すると

#1#2平均値 #1#2平均値
813-0.06 2940+0.255
914-0.07 4366-0.06
1015+0.0154455 0.00
1116-0.0554556+0.04
1217+0.06 4657+0.025
1931+0.25 4758+0.105
2032+0.0254859+0.115
2133+0.0654960+0.01
2234+0.05 5061-0.10
2335+0.08 5162-0.09
2436-0.0155263+0.07
2637+0.04 5364-0.32
2738+0.0455465-0.195

4箇所に関しては多分再修正が必要になるずれが残るが、それほど致命的な値ではないので、多分予定している修正量をそのまま適用しても大丈夫そうだ(但し、正しい評価には上述の通り最小2乗計算が必要)。最後の2箇所はセグメント17がねじれているような値となっているのが気になるが、全体的には大体設定値通りで合っている印象。

センサと制御 box ポートとの関係はここ (山本くん取りまとめ)


●内周リング周辺

内周リングから出ているセンサアームのセンサと対向板の間隔を、スペーサとシムで測定した。赤字は測定値、青字はセグメントの厚さが設計値通り(中心厚 41.11mm)であった場合の値

内周リングの傾きを Seg.2 側を1.8mm 持ち上げ、Seg.5 側を 1.8mm 下げた場合の値。緑字は内周リングの傾き修正後の値で、その下の値は全体の平均値(5.87mm)からの差分。

調整後の値。各セグメントの厚さの差を補正するスペーサを L1〜L6 アームの固定点に入れ、センサと対向板の間隔平均が 0.5 付近になるように内周リングの高さと傾きを調整後の測定値。その下は間隔の平均値 (0.525) からの差分。セグメント 1,4 が+になっており、大体の傾向は合っているので計測にはまあまあ整合性がある事が確認でき、内周セグメント鏡面の高さが±0.2mm 程度の範囲内に入っている事も確認できた。

01~06 のセンサアームを付けてみたところ、アームの先端が内周リングに接触する事が判明。固定ねじからアームの先端までは 85mm だが、実測すると 84mm しかない。

仕方が無いので、ねじの接着位置を 2mm 強離れる方向に移動させる。玉突きで最寄りのアームの位置も 2mm 移動の必要が出たため、ネジを引きはがしてこちらも再接着(〇のずれが設計位置との違い)。

取り付け後。2つのアームがほぼ接触しているが仕方がない...

最後に残った内周リングから出る対向板。これもとりあえず鉄と適当なシムで製作し、落ち着いてからインバーで再製作。


●現在の状態

黄色:2/18 作業終了後に付いていないところ
緑色:2/26 作業終了後に付いていないところ
桃色:2/28 作業終了後に付いていないところ
水色:3/ 5 作業終了後に付いていないところ
   3/12 無事全て取り付け完了。

以下、瞬間接着剤で再接着したもの
10(3/12), 55(4/18), 04(4/25), 35(5/1), 42(5/5), 22(5/12), 24(5/20)


その後、5/21 に全センサのねじを瞬間接着剤で張替え。
以下、その後に脱落・再接着したもの
30(6/5), 34,47(6/15), 02(6/16), 14,48(6/18), 22(6/19), 47(6/25)
22,26,36,40,49,51,52,56,58,61(6/26 に接着の弱いものを手でぐらぐらやって確認)
17,19,24(6/27), 57,61(6/30),19,58(7/1),51,40(7/12),56(7/16),57(7/18)
15,16,18,21,27,28,36,37,45,46,48,52,62,64(7/22)


外周鏡3枚の清掃を行ったが、その途中で高度軸の角度計測作業が入り、EL=20°付近まで主鏡面が傾いた。その際、かなりの水がセグメントコーナーの角から流れ、32番のアームのリファレンスセンサと対向面の間に入り込んだ。センサは通電状態だったので、電食が進み結局アームごと交換となってしまった。

ミラー清掃作業の際は、
  • 高度軸は天頂に向けたまま動かさない
  • 隙間直下のアームの上にコットンを数枚重ねて置いておく
が必要かと思う。また、ミラー清掃は濡れコットンで全面を1時間蒸らした後、濡らす・吸い取るの繰り返しでだんだんゴミや汚れが減っていくが、3〜4回程度(約1時間)行わないと乾いた後に綺麗な状態にならない感じだ。外周3枚だけでも腰が限界で、かなりハードな作業印象。内周セグメントの清掃のハードルが高すぎる...


●内周リング周辺続き

鉄で作ったままだった内周リングの対向板アームとセンサアーム下のスペーサをスーパーインバーで作りなおすことにした。厚さ 5mm で問題ないか ANSYS で確認。3つの脚の内、対向版から一番離れたものを固定し、残り2本は摩擦なし固定で支持して計算した結果が下左図で、更に固定穴部分に 10N の力をかけた場合が下右図。

アーム+対向板での自重変形量は対向板中心で 30nm 弱なので(上図左)、センサアームの変形量 (〜30nm) と同程度。変形が相殺するのでちょどいい感じだ。また、バネ等を介して 10N の力で固定すると、全体が反り返って 100nm 程度上がるがこの程度であれば問題ないものと判断する。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp