ダストモニタ試験
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/monitor.html

岩室 史英 (京大宇物)


●概要

  • ドーム周辺の空気中のダスト量を、カメラ+ライト ON/OFF の差分で検出できるか、テスト装置を準備して試験することにした。

    高度角 40°で LED 懐中電灯2本で挟んだ CMOS カメラ(ラップで防水措置したもの)を東向きの窓の南端に設置。夜間に懐中電灯 OFF1/ON1/ON2/OFF2 で各1sec x 16枚ずつのセット4組を1時間おきに取得し Sky: OFF1+OFF2, dSky: OFF1-OFF2, Light: (ON1+ON2)-(OFF1+OFF2) を計算する。

    取得画像例。左から Sky, dSky, Light の順。Light 画像の上端は窓枠上部の壁(上左写真黄○部分)からの散乱光の影響が少し出ている可能性大。一番明るいのは金星で、右下端にあるのがプロキオン。視野中心は方位+77.5°、高度37.5°、左右幅30°、上下幅40°、ピクセルスケール 1'/pix という感じ。一応、懐中電灯の光の筋は出ているので、これが状況により明るさ変化するかどうかを確認すれば良さそう。


Sky:平均 10.10 dSky:平均 -0.18 Light:平均 1.16

    上部の壁からの散乱光の影響を抑えるため、カメラ位置を下げてみた。

    カメラの向きが地面側に動いてしまったようで(結束バンドでしか固定していないので...)建物が映り込み、上下の懐中電灯のビーム境目がかなり上よりになってしまった(上右の写真でも何となくカメラ部が左回転している感じ)。再調整してみる。中央右側に写っている星団はプレヤデスでその下の明るい星はアルデバラン。Light 画像では、全体の平均値の他、中央幅 1/4 の部分での平均値も出すことにした。


    Sky:平均 17.58 dSky:平均 -0.38 Light:平均 1.30(中3.01)

    大体、方位75°, 高度40°で周辺の影響の少ない方向に向けることができた。右下の縁の右側10°のところに月齢17のほぼ満月があるが、この程度であれば問題なく懐中電灯の散乱光が検出できる感じだ。


    Sky:平均 15.43 dSky:平均 -1.25 Light:平均 2.32(中4.01)

    因みに、小雨が降っているとこんな感じ。このまま数ヶ月放置で埃っぽい日が来るのを待つ。


    Sky:平均 27.64 dSky:平均 0.38 Light:平均 6.49(中9.48)

    視野内に月齢21の半月が入るとこんな感じ。8ビットx16枚加算x2組で13ビットのデータ を、Sky 画像は4で割って11ビットとし、8ビット飽和毎に(これ以上は白黒)と色をつけてある。差分画像(dSky, Light)は割らずに128加算して(即ち、黒:-128, 白:127 に相当)、負側に(これ以上は白黒)の色をつけて表示している。Sky 画像の平均値を見ると、平均値への月の影響は雲よりも小さいことが分かる。平均値だけで視野内の月の存在を知ることは難しそうなので、飽和レベルの 94% 以上のカウントを持つピクセル数をカウントすることにする。


    Sky:平均 15.42 dSky:平均 -0.17 Light:平均 3.23(中4.58)

    最も天気が良くて暗い状態になると、1秒露出でカウント0のピクセルが大半を占めるようになり、正しい計測結果が得られなくなることが判明。この CMOS は BIAS レベルの調整ができないので、0点が負側にあるとこういう困った状態になる。


    Sky:平均 0.91 dSky:平均 0.02 Light:平均 0.31(中0.56)

    仕方がないので、ゲインを2.5倍程度上げることで何とかしてみる。カウント分布の低カウント側の裾野の端が10カウント程度なったので、全ピクセルに何らかのカウントが入る状態になったが、雲が増えてきたり月が近づいた際にどうなるか様子を見る。また、ゲインを上げることで、BIAS レベルの不安定性が見える状態になってしまった。生カウントの全体の平均値は±2カウント程度ふらつく感じだ。


    Sky:平均 47.53 dSky:平均 -3.18 Light:平均 4.97(中8.48)

    設置してから大体1ヶ月経ったので、データの状況を確認してみた。

    :サチっているピクセル数/100 (視野内の月の有無の確認)
    :dSky 画像の平均±32カウントに入らないピクセル数/10000(大きいと雲の状態変化が激しい)
    :dSky 画像平均値/10 (空の明るさの時間変化+検出器の bias 安定性)
    :Sky 画像平均値/10 (全体的な曇り具合)
    :Light 画像中央 1/4 平均 - 全体の平均(懐中電灯の散乱光強度)
    ●:が全て10以下の状況(晴れの可能性大)でのの値

    2箇所だけ●が5を越えている所があるので画像を確認してみると、


    Sky:平均 97.52 dSky:平均 0.06 Light:平均 20.27(中25.64)


    Sky:平均 93.94 dSky:平均 -0.10 Light:平均 8.27(中13.93)

    前者は全体的に散乱光が強いので多分霧に近い状態?で(気象庁のデータではそういう状況ではなかったが...)、後者は明け方の暗闇で雨が降っている状態だった。近大ライダーのアーカイヴは以下の通りで、

    1km 以下の情報はほとんどわからない状態で、雲の高度を計測しているような感じなのでなかなか比較は難しそう...

    ここまでの状況でわかったことは以下の通り。

    • 条件が良ければ大体安定して計測できるが、ダストが検出できるかはまだ不明
    • 計測できる条件の日は京都では少ない
    • ライダーデータとの比較はかなり難しそう

    その後、以下のようなパーティクルカウンターが安価に入手できることが判明したため上記ダストモニタは不要となり、実験はこれで終了。

  • SDS011 (PM10, PM2.5)
  • SDS198 (PM100)


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp