拡張フーコーテスト3
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/foucault3.html

岩室 史英 (京大宇物)


●バイコニック 1A 計測

  • ステージの状態確認
    まずは F/1 光源をステージ正面に置いて、ステージの駆動補正マップが2ヶ月前の試験から変化していないか確認する。ステージやミラー位置の調整など、かなりの作業が入ったが、2ヶ月前の補正マップでの補正後の残差は 6μm で、まあこのままでも使えるかという感じだが、F/1 光源を遠ざけてもう1回取得し、現在の状態での補正マップを作る。

    左図:各位置での測定スポットの明るさと広がり
        S E はスキャン開始直前(S)と終了直後(E)のスポット位置を、スキャン中間点での
        スポット位置を基準として相対位置(pix)で示したもの。中央に集まっているほど
        スキャン中の鏡位置の移動が起こっていないことを表している。
        色は明るい順に黒(黒はサチっている)、丸の大きさはスポットの広がり
    中図:ステージが指令値通り動いているものとしたときの予想位置とのずれ
        図下端の数字はベクトルの平均と標準偏差(μm)
    右図:ステージの位置を駆動補正マップを用いて修正した場合の予想位置とのずれ

    F/1 光源位置を 20mm 後退させて取得したもの。残差は4μm。

    上記2回の結果から駆動補正マップを作りなおしてそれぞれを再度補正し直すと、残差は3μm 前後(3.5μm と 2.7μm)となった。

  • 前処理
    局所的な曲率変化の大きい場所では、スキャン中のスポットの移動速度が大きく、情報の無い部分が多く発生する。そのような場所ではノイズによる局所的な異常値も発生しやすい。まずは、そういう場所をクラスター判定やメジアンフィルターで修正することにした。下図上段が処理前、下段が処理後。やっていることは、

    1. 特定の pixel を中心とした 3x3 領域内部の非NaN値の個数を数える
    2. 3x3 領域内の 1. の数値の最大値で置き替え、ループ順と方向を変えて8回繰り返す
    3. 元画像で上記の値が9になっていない部分は NaN で置き替え(小さい孤立領域の削除)
    4. 上下左右方向に1列全部が NaN になっている部分を中央から外側に向かって調べ、あればその外側を全て NaN にする(画像領域の決定と外側領域の切り落とし)
    5. 3x3 メジアンフィルターを2回まわす

  • モデルフィットの結果
    左から回転補正した測定値、再現モデル、残差の順で、左3つが x 成分、右3つが y 成分。残差のうねりは、サンプルが荒くなる部分でスポット広がりの範囲内が全て同じ値として計測される(計測値が階段状になる)事が原因。モデルの領域を実物よりも 2mm 大きくしないと、面形状の残差を最小にすることができなかった。外形形状に対し、面が設計値通りの位置に加工されているかどうかの調査はそのうち。

    処理時間がかなり増える事になるが、階段部分の形状をモデル形状を参照しながら測定値の統合をやり直す(スポット内の平均値は変化させない)ことで、階段状の段差を無くすことにした。この作業の際にソフトのバグが発覚し、ステージ駆動補正マップが計測結果の統合の際に反映されていなかった事が判明。以前の球面鏡の結果は駆動補正ができていなかった事になる(F/1 光源の結果は別ソフトなので補正ができていたが)。統合前の生データは disk の都合で削除してしまっているので、再解析はできない。

    以下、左から階段状段差を無くした残差、スムージング/変形補正/NaN部内挿後、積分して形状にしたものの順。左から3つが x 成分、その次の3つが y 成分、一番右は x,y の結果の平均。x 成分に見えているのは研削痕のようだ(以前はこの中央が盛り上がっていたが、修正研磨で平らになったのか?)。あと気になるのは、全体がやや右回転しているように見えることで、鏡の水平方向の対称軸と、ステージの x 移動方向が平行から少しずれている可能性がある。糸を張ってチェックしてみる事にする。


    その前に連続取得で安定性を確認。問題なし。


    鏡の水平方向の対称軸とステージの x 移動方向が平行かどうかを確認するため、ある程度伸び縮みできるナイロン糸を張り、その上に黒アルミテープをパンチで丸く抜いたターゲット3つを接着した(鏡に貼るのが理想的だがとりあえずこれで)。ターゲットの位置は、下写真の鏡面右端から 85mm, 162mm, 241mm の位置。ステージを横移動させて画像を目視確認したが、大体合っている感じ。但し、鏡の tilt 角をかなり厳密に調整する必要が生じ、最終的には固定ネジを少し緩める事で対応したので、温度変化に対して不安定になる可能性がある。

    大体同じだが、少しだけ変わった。正面から見ての回転は結局行っていないが、鏡の高さと傾きを少し変えたことが関係しているのか(関係していたらまずいのだが...)。また、糸で張ったマークは鏡から浮いているためか、光の当たり方が変わるとスポット裾の光が影だった領域に入り込んで影だったという情報が消されてしまう(一度も光が当たらなければ NaN になるが)。鏡面に貼って試してみるか...


    ステージを 10mm 遠ざけて取得。こちらの方が、各スポットの広がりが大きくなって NaN 領域が減るようだ。まあまあ同じ結果かなという感じだが、これまでの y 成分の差分マップの処理に問題がありそう。


    スポットが複数写る場合の統合処理方法を修正した。y 成分差分マップ左側上下の状態が改善され、フォーカス位置の違いによる結果の違いがより小さくなった。中央部は糸が光って見えるステージ位置があったため手動で削除した。


    糸を外してマーカー3つを鏡面に直接貼り付け(測定密度の高そうなところに適当に貼り付け)、ステージ位置を再度 10mm 遠ざけて計測。時短のため、計測範囲をギリギリにしたため、中央右側の上下端は計測できていない。貼り付けたマーカーのゴーストが出るようになったが、手動で切り取って対処している。測定時には測定点の欠損として計測されるので、鏡面上での位置の決定精度は 1~2mm 程度になる感じ。


    上下左右反転してみた。形状も大体同様に回転した。左下の形状のへこみは、ステージ駆動が変化した影響の可能性がある。F/1 光源でのチェックが必要そうだ。これ以降、小領域の異常値を除去する処理も追加。



    F/1 光源計測の前に 10mm 近づけて連続取得。ほぼ同じ。


    F/1 レーザー光源でのステージ駆動確認結果。残差には特に問題ないので、形状の若干の変化は光源ビームのどの部分を用いているかに影響を受けている可能性がある。非検面をもう少し端にずらし、検査時に用いるビームがずれるようにしてみる。

    端にずらしてステージを再び10mm遠ざけて計測。上下左右反転後の1回目と2回目の中間のような感じになった。このサンプリング間隔での測定精度の限界か?


    再度ステージを10mm近づけて計測。最小領域での計測のため、右端が計測できていない。


    縦置きの結果。左右のエッジが少し傾いていることから、傾いて置かれることで四重極(馬の鞍)成分が出ている可能性がある。


    とりあえず、ステージ位置を 10mm 近づけ、測定領域を広げて連続測定。


    一番最後の結果のモデルを 0.25°左回転させたら右のような結果になった。結構大きい回転だが貼りつけたマーカーの位置で確認できるかどうか連続測定の2枚を足しあわせてから回転させ、横置きの時の結果とブリンクしてみたのがその右図。マーカー像の相対移動は 1mm 弱なので、やはり確認は厳しい。
    バイコニック鏡を乗せているラボジャッキとアルミフレームを接続するネジの締め加減を少し変えたりしたことがある程度影響している可能性もあるので、固定している2本のねじ2組の向かって右側のねじを2組とも緩めてスキャンしてみた。モデルは同じく 0.25°左回転させたものを用いて解析したところ、ほぼ変化なしの結果となった。ねじの問題でなく、ラボジャッキの置き位置によるベースのアルミフレームの変形なのか。

    穴開きのマーカーでどうなるか確認。マーカー周辺のみ、局所的に 1/10 ステップ(25μm)でスキャンして、全面の測定結果と重ねて変形補正までしたものが下図中。上下マーカーの中心座標は 上(1018,1781), 下(1024,377) でそこから求められる回転角は 0.244°の左回転でモデルの回転方向と大きさが同じだった(下右図は上と同様 0.25°左回転モデルで合わせた結果)。置き換えた際に回転したものと考えられる。

    被検面を正面から見て 0.35°程度左回転させて再度計測した。モデルも同様に追加して回転させ、0.6°左回転となった。上下マーカーの中心座標は 上(1009,1779), 下(1024,378) で、0.61°の左回転。どちらも正しく左回転し、正しく計測できていることが確認できた。横置きで再確認してみたが、強度マップで測定された 0.16°左回転でモデルを回転させたところ、同じ結果となった。マーカー中心の判断を 1pixel 間違えると 0.04°回転角が変わるが、一番右は 0.20°左回転のモデルで合わせた結果。この程度の違いは十分にありうるという事になるが、まあ、このあたりの形状を最終結果として良さそうだ。モデル上でのマーカーの位置が計測結果と合っていることを確認するため、マーカー位置を入れたモデルと強度マップを部リンクさせたのがこれ。この確認の際に、全体の幅が設計値よりも 3mm 大きく、遠い側のコーナーを基準として加工してる事に気がついた。即ち、計測中の面は設計よりも 3mm 外側まで加工されており、fitting 当初、モデルを 2mm 拡張しないと合わせられないという疑問点も解決した(+1mm 分はスポットのボケのサイズで広げられている)。これで問題点は全て解消できた。

    更に 180°回転させて確認。形状が少し変わったのでもう少し考えてみる。マーカーは反対側まで位置確認できるように少し内側に貼り直したが、モデルに対して計測された位置が少し左になっている感じだ(下左図クリックで確認)。ステージ位置を遠ざけても状況は同じだった(下図右側2つ)。形状の計測結果が少し変化したことと関係しているのか。マーカー位置を無理やり合わせると計測結果は10μm 近く曲がってしまうので、ちょっと考えづらい。マーカーを貼り直す際に、横方向の基準となる位置を間違えてしまった可能性もある。再度逆置きにしてマーカーとモデルの位置関係を確認する。

    逆置きに戻して意識的にビームの右側部分を使うように配置してみたが、2つ前とほぼ同じ形状が得られた。モデルに対してマーカー位置が今度は右寄りになったので、やはりマーカーを貼る位置がずれている感じだ。ビームの逆側に寄せて変化を見てみたが、状況は変わらず。とりあえず、右向きと左向きで形状が若干変わって見えることと、マーカーの位置がずれている可能性が高いということを記憶してこの面の計測は終了。後のマーカー位置再測定で、A/B 境界付近のマーカー位置が 1mm 面の内側に寄っていた事が判明したので、全体としてはほんの少し右寄り気味という程度になった。

    F/1 レーザー光源でのステージ駆動確認結果。残差は6μm弱でやや大きくなっていた。

    F/1 光源位置を 20mm 後退させて取得したもの。残差は5μm強でこちらも大きくなっていた。

    上記2つの結果で駆動補正マップを作り直したところ、上記2つの残差はどちらも3μm強となった。周辺部以外はほぼ同じなので、上記の結果に対する影響はほぼないはず。

●バイコニック 1B 計測

  • とりあえず計測
    左から ステージx, モデルx, 残差x, ステージy, モデルy, 残差y の順。

    左から 補正後残差x, 形状x, 補正後残差y, 形状y, 形状xy平均, 計測画像(クリックでマーカー位置確認画像) の順。とりあえず、モデルの回転角は0°だが、マーカーの位置は左0.13°回転(1A 面の計測結果と同じ傾向)で、モデルの残差を減らすためには同程度の右回転が必要で関係が逆だ。実際の面が10μm 近くもうねっているとは考えられない。う〜ん...

    F/1 レーザー光源でのステージ駆動確認結果。残差は6μm弱でやや大きくなっていたが結果にはほぼ影響はない。一応新しい駆動補正マップで差し替えておく。

    逆置きにしてみたが、若干計測結果が変わってしまった感じだ。モデルの回転角は 180°、マーカー位置は0.16°左回転なので、ベースの傾きは変化していない。マーカーの間隔も実測値のほうが若干広く(前回の計測結果も同様)、なぜ合わないかよく考える必要がある。

  • 投影効果による変形
    拡張フーコーの原理は、特定の (x,y) ステージ位置でどの方向から光が来るのかの光線の方向ベクトルを計測するものだが、被検面上での法線ベクトルマップに変換する際、仮想的な平面スクリーンに光線方向を逆に辿って投影し、被検面までの距離とステージ (x,y) 位置の情報からその投影像を変形するという方針で行なっていた。しかし、この鏡のように F 値の小さい明るい鏡の場合、平面スクリーンに投影した際に、周辺部が引き伸ばされる変形(星型歪曲)が現れる。この歪曲は法線ベクトルマップを積分して最終形状に変換する際に、若干の影響となって現れるはずだが、とりあえずは気に留めておく程度で放置とする(モデル出力をステージ x,y だけでなく、モデル x,y も出力し、その情報で変形補正をする必要がある)。

    縦置きにしてみたが、逆置きの結果と大体同じだ。モデルの回転角は -90°、マーカー位置は0.13°左回転でやはりベースの傾きは変化していない。マーカー間隔が実測値の方が若干広いのも同じだった。

    拡張フーコーテスト2で F/1 レーザー光源を 20mm 動かしてピンホールと CMOS の間の距離を計測したが、20mm をそれほど精度よく動かしていない(ラックピニオンステージに乗っている)事もあり、この時の移動量が 0.15mm 少ないとモデルのマーカー間隔と実測値のずれを説明できることに気が付いた。この修正を行うと、回転方向が逆という問題も同時に解決し、モデルを 0.13°左回転することで更に残差が小さくなった(下図)。被検面の形状が4μm 近く変化したので、ピンホールと CMOS の間隔は、もっとちゃんとしたステージを使って正確に計測する必要があることが判明した。

    一応、ステージ駆動補正マップを作り直してから新しいモデルで計測の段階からやり直しても同じ結果が出ることを確認。

  • ピンホールと CMOS の間隔精密計測
    F/1 光源ベース部のステージを、ラックピニオンタイプからマイクロヘッドタイプのものに置き替え。0mm,20mm,40mm の3ヶ所で繰り返しピンホールと CMOS の間隔を計測した結果(距離の単位は pix)。間隔の計測は、それぞれの場所での 50x50 スキャンからステージの駆動補正マップを作成するのと同じ手順で、計測スポットの位置を正方グリッドに当てはめ、その時の変換倍率から読み取った。これにより CMOS の回転やステージ駆動の非線形成分の影響を除いて評価することができる。

    0mm - 20mm の結果: 3717.87pix
    20mm - 40mm の結果: 3717.58pix
    40mm - 0mm の結果: 3716.67pix
    0mm - 20mm の結果: 3718.37pix
    20mm - 40mm の結果: 3714.42pix
    ------------------------------
    平均       : 3717.0 pix

    バイコニック上に張り付けたマーカー間隔から出した値は 3734.2pix で、これまで用いてきた値は 3706.4 pix だ。F/1 光源の前後移動から得られる値は、上記2つの結果の中間に相当するもので、どうもしっくりこない。全く別の方法も考えることにする。

    一応、上記 3717.0px の値で計測したものが以下。

  • ファイバー2本を用いた確認方法
    とにかく、1/1000 精度で配置を決定しないといけないため、配置や移動のサイズを 30cm レベルにまで大きくする必要がある。以下のような方法を試してみる。

    小文字の距離の単位は pix、大文字の距離の単位は mm で、x1, x2, X, Y2-Y1 の値から y を計算する。
    X, Y2-Y1 をどちらも 30cm 前後の値にすれば、1/1000 の精度が出せるのではないか...

    Y2/X=y/x2
    Y1/X=y/x1

    (Y2-Y1)/X=y(1/x2-1/x1)

    y=(Y2-Y1)/X/(1/x2-1/x1)

    ビームスプリッタへの入射角度の変化が Y2-Y1 に与える影響を考える。
    入射角を tanθ(〜X/2/Y), 屈折率を n, 厚さ L として実効的な厚さ L' を計算すると、

    sinθ=nsinφ
    L'tanθ=Ltanφ
    L'=(L/n)cosθ/cosφ

    例えば、tanθ=1/4, n=1.515, L=10 の場合 L'=6.487mm で、tanθ=1/6 になると L'=6.550mm なので、0.063mm の差が出る。30cm スケールに比べ 1/1000 よりも十分小さいので特に気にする必要は無さそうだが、一応補正してみる。

  • 測定と結果
    コロナの影響で1ヶ月半実験が止まっていたが、緊急事態の解除があったので再開。

    100mm の直進ステージの上に光学レールを固定、その上にキャリア2個を固定してストッパとし、その間で 300mm 離れた2点を当て止めで動かせるようにした。これにより、0, 50, 100, 300, 350, 400mm の6点を2回測定した。前半の3つと後半の3つの集団としての間隔はノギスでの測定のため 300mm よりも若干ずれている可能性があるが、同じ光学レールとストッパ配置でファイバー間隔を決定しているため(下左写真)、X の値も同じ影響を受ける(以下、この量を δ とする)。1回目と2回目の測定を連続で行った翌日に、3回目と4回目の測定を連続して行った。

    YXx(1回目)x(2回目)x(3回目)x(4回目)
    0300+δ 1995.351995.211994.131994.88
    50300+δ 1832.001831.861831.001831.59
    100300+δ 1693.331693.211692.561692.98
    300+δ300+δ 1299.391299.351298.941299.10
    350+δ300+δ 1228.061228.001227.771227.95
    400+δ300+δ 1164.181164.141163.891164.01

    上記の結果より各測定での Y 平均と 1/x 平均を計算し、そこからの差分を用いて y を計算した結果が以下(球面収差も一応補正済み)。左が δ=0 の場合、右が δ=0.3(1回目と2回目),0.35(3回目と4回目) の場合。y=3726.3 pix をこの計測での結果とする。この値は、これまでの異なる2つの手法での計測値の中間の値で、大体予想されたものとなった。

  • 計測再開
    F/1 レーザー光源でのステージ駆動確認結果。室温変化の影響か、x 方向右端のステージの動き方がかなり変化したので、駆動補正マップを差し替え。また、対物レンズをできるだけ清掃したので、影のできる領域がかなり減った。

    計測結果。マーカーとモデルの関係はほぼ完全なので、横置きで同じ結果が得られれば完了できそう。

    置き方を変えると、マーカーとモデルの位置関係が少しずれたりするという問題が当初見られたが、モデル合わせの計算の際、local minimum に引っかかっているということが判明した。モデルとマーカーの位置を大体合わせる拘束をかけて収束させ、その後拘束を解除して再度収束させなおすことでマーカーとモデルの位置がほぼ同じになり、かつ3方向の置き方で結果がほぼ同じになることが確認できた。

    以下の3つは、マーカーとモデルの位置を大体合わせる拘束がかかっている状態。ベストフィット結果同士の方が違いが少ない感じだが、なぜそうなるのか原因を特定するのがかなり難しいレベルになってきたので、とりあえず保留。

    研削盤上での計測結果と比較してみるとまずまず合っている感じ。1B 面の計測はここで終とし、再度 1A 面の計測に戻る。

●バイコニック 1A 再計測

  • とりあえず計測
    ピンホール - 検出器間距離が修正されたのと、マーカー位置を基準にまずモデルの位置を決め、それから最適位置を計算したこともあり、それなりに良さそうな結果が出た。向きを変えて計測。

    とりあえず断面を出してみたが、計測結果に一部縦縞のような構造が入っており、断面中央の凸構造は偽の形状の可能性が高い。縦縞の原因は、中央よりも右側での測定点密度の低さなので、計測パターンの改良が必要かも。

    縦方向の scan 密度を2倍にしてみたが、やはり縞が残る(但し間隔は半分程度になった)。解析の際の閾値を高くして、暗い裾野の情報をカットしてみたのが中央。基本的な傾向は変わらないので、暗い裾野の影響ではなさそうだということがわかった。

    縦方向の scan 密度を2倍にしたものの結果の詳細が以下。左3つが x 成分の情報、右3つが y 成分の情報。スキャン時にスポッ対が新たに発生する部分(右半分の上下の反転ポイントのようなところ)では、測定値の前後の値を持つスポットが片側にしか存在しないため、y 方向のスポット移動が速いことと併せてかなり対応しづらい状況となっている。ピンホール径を小さくすれば改善するはずだが、感度も低下するしなかなか難しい。ここでは、幸い x 方向の情報は影響を受けていない感じなので、x,y それぞれの結果の平均を採用するのではなく、x 成分から出した結果の方を採用することにする。

    「へそ」の形状が大体一致したので、これで合っている感じ。

●バイコニック 2A 計測

  • とりあえず計測
    左から ステージx, モデルx, 残差x, ステージy, モデルy, 残差y の順。

    左から 補正後残差x, 形状x, 補正後残差y, 形状y, 形状xy平均, 計測画像(クリックでマーカー位置確認画像) の順。とりあえず、モデルの回転角はマーカー像位置を元に0.08°にした。マーカーの間隔がモデルで予想される間隔よりもほんの少し広くなっているのが気になるが...(鏡の曲率が大きすぎてマーカーの中心間隔が計測しづらいこともある)

    逆向きで計測したら、マーカー位置に基づくモデル回転角は0°となり、少し形状が変わった。駆動マップの変化やマーカー位置など、回転に関する変化にはかなり気をつけているはずだが、データの感じとしては回転の影響が出ている感じだ。かなり色々状況確認をしたがいまいちはっきりしないので、再度置き方を戻して計測してみたところ、やはりモデルの回転角は0°で、似たような結果となった。

    初回計測と同じ0.08°左回転だと初回と似たような結果となる。なかなか、現在のマーカー位置の決め方ではどちらの回転角か微妙な所で、断定は難しそうだ。どちらにしても、初回と今回ではややマーカーの見え方が変わり、モデルをマーカーよりもやや左回転気味に合わせないと初回と同じにならない。このことを踏まえて、置き方を再度反転させて再計測してみた。0.12°左回転でほぼ同じ結果となり、0.1°程度マーカーが右回転して貼られているのであれば解決となりそうだ。問題は、マーカーが外形の縁に沿ってどの程度回転しているかをどうやって測定するかだ。350mm ストロークの X ステージがあれば話は簡単なのだが...

  • マーカー位置測定
    アルミフレームで枠を組み、カメラを固定して鏡の上側の辺を基準としたマーカー位置をカメラで計測した。鏡を水平に置くとマーカーの高さの違いが 3cm 程度になるため、鏡全体を傾斜させて高さの差を小さくして計測した。その結果、マーカー位置は 0.37mm ずれて貼られており、0.073°右回転していることが判明した。これで、大体マーカー右回転を仮定して解析した結果が正しいことがわかった。

    上写真で、マーカーについている糸状のものは、キムタオルの繊維(貼り付け作業の際、最後にキムタオル越しに横ずれ方向の力をかけて位置調整したため)であって、鏡面の傷ではない。

●バイコニック 2B 計測

  • とりあえず計測
    左から ステージx, モデルx, 残差x, ステージy, モデルy, 残差y の順。

    左から 補正後残差x, 形状x, 補正後残差y, 形状y, 形状xy平均, 計測画像(クリックでマーカー位置確認画像) の順。とりあえず、モデルの回転角は 2A の時の値を元に 0.10°にした。とにかく、明るい鏡なので現システムで全体を一度に計測することができないので、マーカーもどこに貼るべきかよく考える必要がある。右側の方に研削痕による結構大きなうねりがある。

    ちなみに、モデルの回転角を 0°にすると形状が良くなる(下左図)。やはりマーカーを張り付けて回転角を測定する必要がありそうだ。カメラで見ながらマーカーを貼り付けて再計測したところ、回転角0°であることが確認できた(下中図、下右図)。

    鏡面の右端部分。大体の形状は左に動いたことが確認できる。マーカーが1つしか見えないので回転の確認ができないが、少しモデルを右回転させた方がいいかも(下左)。ステージ駆動補正ファイルを撮り直して再度計測したものが下中、0.1°モデル右回転させたものが下右。中央との接続はこちらの方が良さそう。

    再度中央付近に戻して計測。ほぼ同じ結果が再現されたので問題なし。若干マーカー位置が左回転だったので、モデルを 0.04°左回転させたものが下右(実際には新解析アルゴリズム試験のため測定からやり直し、モデル回転なしで同じ結果が出ることを確認してから左回転させたもの)。

    上右と同じ 0.04°左回転のモデルで鏡面左側の結果に合わせたものが下左。モデルを更に左回転させて 0.08° にしたものが下中。こちら方が中央との接続が良さそう。 3つの結果をマーカー位置で合わせてつないだものが下右。

    上下反転させての中央部の計測。マーカー位置から 0.10°モデルを左回転させた。大体合っている感じ。左側(下中)は 0.08°、右側(下右)は 0.06°が良さそう。

    再度中央に戻って確認。マーカー位置からモデル回転角は 0.08°左回転。上左とほぼ同じ結果。つなぎあわせた結果を逆置きの結果と比較すると、左端の計測がエッジまで届いていなかった部分以外は大体同じ結果となっている。

180°回転

    鏡を前傾させて(下左写真)中央下側をとりあえず scan してみた(下中)。余り前傾させると危険なので、鏡の下端 1cm 近くまでしか計測できない。マーカー位置からの回転角は 1.30°左回転。ステージ駆動マップを再計測して撮り直してもほぼ結果は変わらず(下右)。

    続けて下側の左右。左下側(下左)の回転角は 2.15°、右下側(下中)の回転角は 0.58°で大体合いそう。 逆置きでの全測定結果を重ねたものが右下。表示範囲を±2μm にしてある。

    上下反転させて、中央部下側の計測。とりあえずの計測ののち、ステージ駆動補正マップを取り直して再度計測し、大体同じ結果が得られた。マーカー位置で決定されるモデル回転角は -1.00°。

    続けて下側の左右。左下側(下左)の回転角は -0.02°、右下側(下中)の回転角は -1.80°で大体合いそう(但し、マーカー位置がちょっとずれている...)。 全測定結果を重ねたものが右下。表示範囲を±2μm にしてある。

●バイコニック 1B/1A 再計測

  • マーカー位置確認用カメラを用いて、ミラーの幅の中央に正確にマーカーを貼り直して、再度 1B を計測。以前の測定結果と同じ結果となることが確認できた。マーカー位置による回転角は 0.10°左回転。ステージ駆動マップを再計測して撮り直しても結果はほぼ変わらず(下右図)。
  • 続けて 1A を再計測。マーカーによる回転角は 0.06°左回転(下左)。この位置でのスキャンは左側のマーカー付近の縦方向の曲率中心に近すぎてマーカーの影の形状判別が難しいので、カメラ位置を 3mm 前進させて再計測してみる。スキャン密度が低くて縦縞が出る問題もそのまま再現されたので、スキャンパターンも変更してみる。今度は回転角は 0.02°左回転(下中)。やはり前回と同様縦縞が残るので、x 成分から出した結果(下右)を最終結果とする。

●研削盤上での計測データとの比較

    ・Mirror 1 の計測後に計測結果のグラフと見比べたが、Mirror 2 の分と併せて、元となる数値データが入手できたので同一のグラフ上に plot して比較した。その際、研削盤上の計測データにできるだけ合うように、拡張フーコーでの計測結果に傾斜をつけて比較した。以下、画像の表示は±2μm の範囲。

Mirror 1A
5.22801pix/mm
最下点(1200 991)
Mirror 1B
5.82171pix/mm
最下点(857 1041)
Mirror 2A
6.74053pix/mm
最下点(1789 1019)
Mirror 2B
8.49563pix/mm
最下点(814 1450)
    う~ん、Mirror 2A の結果が意外と一致しない。ヘソ付近の形状が合わないが、この部分の計測密度はかなり高いので、データの不連続が原因とは考えにくい(左端はかなり間隔が荒くなるので、結果に少し影響が出ている可能性はある)。よく考えないと...

    Mirror 2B のデータ重ねあわせの際には以下の方法でレベル合わせを行った。

    1. 画像データの総数を N 枚として、加算すべき値を dn とする。
    2. i 番目の画像と j 番目の画像の有効データ(NaN でない部分)の重なり部分の差の総和を aij、そのピクセル数を bij とする。
    3. Σ(bij(di-dj)+aij)2 が最小となる状態を考え、di での微分が0となる条件で N 個の方程式を作る。
    4. Σdn=0 の条件を追加し、方程式を N+1 個とする。
    5. 擬似逆行列を計算し、dn を求める。
    6. 重ね合わせの際には画像の端から 256 pix の部分の重みに線形の傾斜を付け、最外側の1ピクセル外側の重みが0となるようにした。

    とりあえず、Mirror 2A の結果は納得できないので、再計測してみる。

    できるだけビーム径が小さくなる場所を探し(以前の測定位置より 35mm 遠い位置)、スキャン面積を減らした分密度を2倍にして計測した。光源の面輝度分布が変わったのか、周辺部と中央部の面輝度の差が激しい。中央部が完全にサチる状況でも一番外側が暗すぎて完全にはデータが取れていない。その影響か、周辺部の形状が前回のデータと若干異なっている。光源の光量分布などもう少し調査が必要。

    光学定盤が入ったので、拡張フーコーを定盤の上で行なうことにした。移設の際にステージユニットを横倒しにしたのが悪かったのか、カメラ付近のネジを少しだけ増し締めしたのが悪かったのか、計測結果が x 成分と y 成分で矛盾するようになってしまった。色々調べた結果、光源とピンホールの関係がずれた可能性が高いと判断し、F/4 光源で位置関係を調べたところ、100μm ほどピンホールの位置が横ずれしてしまったようだ。位置を決め直して再度測定してみる。

    再測定してみたがセッティングが変な状況は変わらないので、カメラ調整に必要な条件をよく考えてみると、

    1. 入射光源とピンホールが光学的に同一の場所にあること
    2. ステージの XY スキャン面と検出器が平行であること
    3. ピンホールを通ったビームスプリッタの法線方向の光が検出器の中央付近に来ていること

    で、これらを同時に成立させないといけないのを忘れて 2. の条件がずれてしまったのが原因のようだ。全て、ソフト的に計算で対応することが可能であるが、セッティングがずれた際の原因調査が難しくなるので、できる限り対称性が保たれるように完全に調整しておく方が望ましい。1. は上写真のように F/4 光源で、2. は正面に配置した固定ファイバー端がステージスキャン範囲の四隅からどの方向に見えているか、3. は 1. 調整後のビームスプリッタ射出面での反射戻り光の検出器上での位置で調整し、再度計測となった。

    とりあえずの計測結果は以下の通りだが、以前との形状変化から判断してピンホールと検出器間の距離が少し(~20μm)近づいた可能性があり、ピンホールと検出器間の距離の再計測が必要だ...

    ということで前回と同様な方法で再計測してみた。結果はほぼ変化なしで予想が外れた。ピンホール・検出器間距離の変化と同等な影響を及ぼす要因は何か不明だが、とりあえず左右反転で元に戻して計測を続けることにする。

    ステージ位置を 1cm ずつ後退させて取得してみた(一番右はスポット最小位置なので、スキャン密度2倍で取得できた)。どこで取得しても2つ折りのような影響が出る。

    ピンホール・検出器間距離の変化と同等な影響が出る1つの可能性として、ピンホール位置の前後があることに気がついた。ピンホール径は200μm あるので、F/4 の光では 0.5mm 程度の前後位置決定精度になる上、光源レンズやビームスプリッタによる球面収差も加わるためピンホール位置の前後を正確に決めることは難しい(下図左が入射ファイバーに F/4 光源の光が最も入る状態、下図右がその状態でのピンホールとの関係で、±0.5mm の位置決めを行なうことは困難だとわかる)。また、計算は行き帰りのパスが同一であることを前提に考えているので鏡面の法線を出発点としており、ピンホールの前後の効果を確認することが難しいが、定性的にはピンホール・検出器間の変化と同等な影響が出そうである。また、以前はピンホール位置がかなり前にあったが、今回の調整ではビーム中央付近の光を信用して後ろ気味に調整している。以前と同様、前気味に調整しなおして変化を確認してみる。

    結果は予想通りで、以前と同じ結果が出るようになった(露出時間がやや短く周辺部が撮れなかったが)。どちらが正しいのか確認する方法は難しそうだが、他の3面は以前のセッティングで機械計測結果と大体合っているので、状況証拠的にはこちらの方がセッティングとしては正しそうだ。これでもう少し調べてみる。端まで撮るために中央付近を飽和レベルの3倍近くのカウントになるまで露出時間を延ばしてみたが、迷光自動カットのプロセスがうまく働いて形状は問題なく計測できているようだ。

    以下は、上図一番右の結果に対し、マーカーでは識別できないレベルの 0.04°モデル左回転を加えたもの。結局、何度計測しても似たような結果にしかならず、この面だけは機械計測との結果がやや合わないまま、これを最終計測結果とすることにした。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp