拡張フーコーテスト2
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/foucault2.html

岩室 史英 (京大宇物)


●問題調査

  • 拡張フーコーテストの概要はこちら
  • 試験概要
    ステージの駆動状態を確認するため、以下の試験を行った。入射光を拡散させるマイクロ凹レンズ部分の細かいゴミが以前から気になっていたため、入射部を完全分解して掃除、再組立してから試験を行った(マイクロレンズのゴミ取りは try & error & 捜索 の繰り返しで延べ 8時間ほどかかり、非常に難しいことが良くわかった...)。

    • F/1 レーザー光源を正面に配置
      ステージの駆動精度の測定と、位置修正のためのデータを取得する。
    • 平面鏡
      スキャン中のステージの首振りが起こっていないことを確認する。
    • 球面鏡
      直径50mm、曲率半径100mm を前後に位置を変えてスキャンして、計測再現性を調べる。

    以下、ステージ位置(X,Y) (mm) に対する各測定結果を3つの図で示す。
    左図:各位置での測定スポットの明るさと広がり
        S E はスキャン開始直前(S)と終了直後(E)のスポット位置を、スキャン中間点での
        スポット位置を基準として相対位置(pix)で示したもの。中央に集まっているほど
        スキャン中の鏡位置の移動が起こっていないことを表している。
        色は明るい順に黒(黒はサチっている)、丸の大きさはスポットの広がり
    中図:ステージが指令値通り動いているものとしたときの予想位置とのずれ
        図下端の数字はベクトルの平均と標準偏差(μm)
    右図:ステージの位置を F/1 レーザー光源のスキャンの情報を用いて修正した場合の予想位置とのずれ

  • 解析手順
    CMOS 上には直径20pix 程度に広がったスポットが1つだけ写り、スキャンとともに移動していく。スポットの重心位置をできるだけ正確に計測し、予想位置マップとの比較で起こっていることを推定する。手順は以下の通り。

    スポット重心決定

    • 51x51=2601 画像の平均を計算、平均値から±300カウントでクリッピングしながら再度平均を出すことを2回繰り返し、ダークフレームを作る。
    • ダークを引き、3x3 メジアンフィルターを通した後の最大値位置を中心として4つの象限に分割、背景光レベルの 1.5倍かつピークの 1/4 を満たす連続領域内部での重心とσを計算する。

    予想位置マップとの比較

    • 測定された重心位置に対して、キューブ型ビームスプリッターの球面収差による位置ずれを補正
      球面収差の中心は鏡のない状態での長時間露出によるビームスプリッター表面での戻り光で決定
    • スキャンパターンをステージの駆動補正テーブルで補正
    • 補正後の重心位置マップ(pix)と補正後のスキャンパターン(mm)それぞれで均等な重みでの重心とσを計算、重心位置マップをスキャンパターンに合わせるための重心移動量と拡大倍率を算出
    • 重心と拡大率をスキャンパターンに合わせた状態で、重心を原点とする対応する位置ベクトルの内積と外積それぞれの平均値を計算、全体の回転角を算出
    • 重心周りで重心位置マップを回転させて、スキャンパターンからの残差ベクトルを調べる。

  • F/1 レーザー光源
    とりあえず撮ってみた。データの補正ができていることを自分自身のデータで確認。スキャン開始直前のスポット位置が結構ずれていたのでスキャンの前半で変形の影響がある可能性が高く撮り直すべきかもしれないが、後半は問題無さそうなのとこの情報は後からでも差し替えできるので、とりあえずこの情報をステージ位置の補正マップとして使うことにする。
  • 平面鏡
    CMOS 上のスポットは移動しないため、指令値に比例させてスポット位置にオフセットを与えてレーザー光源と同様に評価。スキャン中のカメラの首振りは無いことが確認できた。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。一度ステージを外してから再度固定し直した数時間後に取得している。スキャン開始直前と終了直後のスポット位置がかなり動いていたので、固定後に安定するまで結構時間がかかってしまったようだ。この結果は信用できない。測定中に鏡が動いていくと結果がどうなるかの参考程度。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。上から更に1日弱経過後のもの。まだスキャン前後の状態に変化が見られる。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。更に半日経過後。スキャン前後の状態に変化は無く大体落ち着いている感じ。
  • 球面鏡(+25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。明るさ調整を忘れたので、一番明るい部分がサチっている(左図で黒表示)。今回もスキャン前後で少し像が動いている。凹面鏡を前後に動かしているラックピニオンステージが怪しい。状態を変えると完全に落ち着くのに数日かかるのか? 像サイズが縮んでも大体の傾向は+45mmの時と同じ(球面鏡そのものの形状の情報)だが、周辺部では異なっている感じ。ステージ位置補正情報をちゃんと撮り直すべきかも。
  • 球面鏡(+25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。明るさ調整をしたがまだ少しサチっている。今回もスキャン前後で少し像が動いている...。ステージの原点合わせをしばらくしていなかったが、原点参照しても状態に変化は無かったので、ステッピングモータの脱調は無いようだ。
  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。+45mm の時の分布が反転して見えるはずだったのだが、遠ざかると位置補正後のずれが大体消えてしまう状態となった。横ずれは少しだけ見られるが方向が逆転したので、ミラーホルダーがじわじわと横方向に移動していることは確実となった。なぜ球面鏡の形状が変わったように見えるのかよく考えないと... ビームの明るさ分布が軸対象になったことが関係している可能性がある。
  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。横移動はほとんどなし。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。横移動はほとんどなし。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。横移動はほとんどなし。
  • F/1 レーザー光源
    始めに撮ったレーザー光源のパターンが再現されるか確認。ちゃんと補正できているのでこれまでの補正は問題なく適用できている感じだ。一部ずれがあるのは光源のマイクロレンズ部のゴミの可能性が高い。
  • F/1 レーザー光源
    連続で取得したもの。これ以降、上のデータで補正を行う。

  • F/1 レーザー光源
    光源位置を 20mm 遠ざけて取得したもの。ステージ駆動補正は問題なく、ステージの駆動は安定していることがわかる。この結果と1つ上の結果から、ピンホールと CMOS 間の距離 y が計算できる。1つ上の光源とピンホール間の距離を x として、スキャン幅が 25mm、対応する1つ上のスポット移動量は 1705.44pix、今回は 1246.57pix なので、

    y/1705.44=x/25
    y/1246.57=(x+20)/25

    458.87y/(1705.44*1246.57)=20/25

    y=3706.4 pix

  • F/1 レーザー光源
    連続取得の結果。ゴミのある所以外は安定。
ここで、距離による見え方の違いは入射ファイバー先端とピンホールの光学的位置関係にずれがある場合に起こりうる可能性があることに気がついた。もしもこのようなずれがある場合には、計測される法線方向にはオフセット角(下図黄色部分)が加わることになるが、オフセット角が一定の軌跡は円となるため、反射面までの距離に応じてオフセット角一定の曲率半径が変化する。

このことは、近い側で見えていたうねりが遠くになると緩和されることも定性的には合っている(曲率でなくうねりである原因は不明だが)。そこで、予想される方向にピンホールを少しずらし(実際にはカメラの首振り角を少しだけ変えた)、鏡の上下反転は行わずに +45mm 位置から再度計測してみることにした。

  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。ここからは箱を被せて昼間も試験することにした。光量分布の対称性は良くなったが、スポット位置のずれも変化した。やはり光量分布と関係ある感じで、ピンホールカメラの首振り角と関係ありそうということになってきた。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。ほぼ連続して撮ったにもかかわらず、結果が変化した。再度ステージ駆動マップを撮ってみる。
  • F/1 レーザー光源
    思ったよりステージの状態が変わってしまった。ピンホールカメラの角度が変わった以外はほとんど変わっていないはずだが... カメラのケーブルの位置が変化すると、ステージにかかる力加減が微妙に変わっている可能性もある。しばらく F/1 光源でいろいろ試してみる必要がありそう。
  • F/1 レーザー光源
    連続して取得したもの。上のデータでステージ位置を補正。少し違いがある。
    カメラのケーブルをカメラの真後ろで引っ掛けるようにしてみた。作業前後の状態が下左と下中の写真。これでステージの動きに変化があるか調べてみる。

  • F/1 レーザー光源
    上中写真の状態で取得したもの。やはりステージの動き(というよりはカメラに対して固定されているピンホールの位置)に影響が出た。最も影響の出やすいコーナーの場所でリアルタイムでの拡大動画を見ながらケーブルを少し触るとスポットの位置が移動する。少しの摩擦でも影響が出そうな感じなので、引っ掛けるだけではまずいと思い、上右写真のように結束バンドで2ヶ所固定した後、ステージを何度かフルストローク動かして大丈夫そうだったので、これで再度スキャンしてみる。ファイバーの方はよほど動かさない限りスポット位置に影響はなかったので、変に圧力を加えるよりは自然な状態のほうがいいと判断し、とりあえずはそのまま。
  • F/1 レーザー光源
    上右写真の状態で取得したもの。スキャン端での動きを調べる際に10倍にした露出時間を戻すのを忘れて測定してしまったため撮り直し... 2つ上のデータと大体同じ感じだ。

  • F/1 レーザー光源
    露出時間だけ戻して、数時間間をおいて測定。ほぼ同じ状態が再現されている。サチるほど明るく撮っても、重心位置の決定のみであれば問題なく、逆に暗い部分の測定精度が上がるので、この計測の際はかなり明るく撮った方がいいという事がわかった。というわけで、これ以降は1つ上の結果でステージ位置を補正。
  • F/1 レーザー光源
    連続取得。大丈夫そうなので、ここから球面鏡の試験に戻る。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。思ったよりずれが大きい。設置後すぐにスキャンを始めたことが影響しているかも。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。連続して撮ってみたが、変化なし。う~ん... 何が起こっているのか。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。露出時間を2倍にしたが影響はなし。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。箱を外してみたがこれも影響なし。
  • F/1 レーザー光源
    再度レーザー光源でステージ駆動を確認。同じ動きで動いているので、球面鏡の計測は正しくできているはず。謎が深まった...
    とりあえず、入射ファイバー位置とピンホール位置のずれを直してみる。F/4 光源を組み、入射ファイバーに逆から入射させて反対側の光量最大になっている状態で、ピンホールの位置を合わせる。0.2mm ほど斜め方向に位置ずれしていた感じだ。直感的には結果に影響が出るとは思えないが...

  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。やはり、ほんの少しでもピンホール位置が移動すると結果に影響が出るが、ミラーが遠ざかれば影響はほとんどなくなるはず。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。少し露出時間を増やして連続計測。変化なし。
  • 球面鏡(+25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。大体以前と同様な傾向。
  • F/1 レーザー光源
    ここで再度レーザー光源でステージ駆動を確認。ファイバー端とピンホールの位置合わせの際、カメラの付け外し等を行ったせいでケーブルの力加減が変化したようだ。ケーブルを触ったら毎回駆動確認をしなくてはならないのか...
    ケーブルの力がステージに伝わりにくいようにケーブル部を更に緩めて再度レーザー光源をスキャンしてみる。

  • F/1 レーザー光源
    1つ上の結果でステージ駆動を補正。ケーブルの経路をかなり変更したにもかかわらず、変化は小さい。ケーブルよりもカメラの角度が変わるとステージ駆動パターンが変化したように見えるのだとすると、光源部の収差が影響しているという事も考えられるが、以前光源を遠ざけてスキャンした際も周辺部まで同じパターンが得られたので、これも考えにくい。う~む...
  • F/1 レーザー光源
    明るさだけ少し変えて繰り返し。1つ上の結果で補正。
    今の所、レーザー光源のスキャンは以下の3パターンが出ている。一番左はケーブル固定前なのでケーブルでカメラが少し引っ張られた可能性が高いが、真中と右の変化はケーブル固定後。ステージに対するカメラの固定状態が変わると変化するが、光源の収差以外の原因を考える必要がある。

  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。やはり遠いと歪みは緩和される。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(-35mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 35mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
    上記3つの結果から求めたミラー形状。一番右には迷光によるエラーが含まれるが ±2μm 表示で大体一致している感じ。

    ファイバーとビームスプリッタを固定している L アングルの前面が光ることに気がついたので、黒く塗装。また、ファイバーの固定が気になったのでテープで固定することに。ファイバーを自然な状態で固定するにはステージから離れた場所での固定が必要だったが、ロッドを立てるのが面倒だったのでカメラケーブルに固定した。大丈夫かどうかレーザー光源でステージの駆動状態を確認しておく。

  • F/1 レーザー光源
    まあ問題ない感じ。
  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。前回の +45mm と比較するとパターンが回転したようにも見える。ファイバー入射部分のマイクロ凹レンズとの位置関係の可能性がある。
  • 球面鏡(+25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。前回の +25mm と比較するとやはりパターンが少し回転したようにも見える。
    上記2つの結果から求めたミラー形状。とにかく、鏡が近いと迷光が多すぎてちゃんとした結果を得ることが難しい(頑張って迷光処理すればいいのですが)。コマ or 非点収差的な変形が確認できるが、左右の非対称成分に関しては fitting が迷光の影響を受けている可能性があるので近いほどコマが増えているのかどうかの判断は微妙。
    ここからは凹面鏡の背面にプランジャで力をかけて場所を変えて計測。

  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。少しわかりにくいが、圧力を加えたことで緑や水色など微小なずれが増えた。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。-35mm にしたつもりだったが、動かし忘れていたようだ...
    上記3つの結果から求めたミラー形状。力を加えたことで2つ折れになった感じだが、中央が凹んでいる... スポットずれも内向き微小変位しているものが多く、実際に力を加えた方向とは逆方向に曲がっている感じだ。プランジャを限界まで縮めて再度調べてみる。

  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。ベクトルマップではよくわからないが、今度は中央が膨らんだことが検出できた。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。迷光の影響か、中央の膨らみが検出できていない...
  • 球面鏡(-35mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 35mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。やはり変形の検出は微妙な感じ...
    上記3つの結果から求めたミラー形状。一番遠い所では変形が検出できたが、近いと検出できない。迷光の影響か、鏡面上でのサンプリング間隔が半分になったことの影響が考えられるが... 中間距離では膨らんでいる範囲が広いのが気になる。本当に変形を検出できているのか? ミラー背面のプランジャは完全に縮んでいるが、さらにねじ圧を追加して継続してみる。

  • 球面鏡(-35mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 35mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
    上記3つの結果から求めたミラー形状。やはり距離によって中央の膨らみの形状がやや異なって見える。一番近い状態で、スキャン間隔を半分にするとどうなるか試してみる。

  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。ステップ間隔を半分にし、とりあえずステージ駆動マップを内挿により分解能を2倍に上げて適用してみた。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。プランジャを外して最初の状態にしてみた。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。更にミラーをホルダー内で90°回転させた。
    上記3つの結果から求めたミラー形状。迷光の影響はあるが、やはり近いと中央の膨らみは消えてしまう。2つ折りが大きくなるのは正しく検出できている感じなので、なぜ中央部だけ変わるのかが謎。90°回転させても結果が90°回転したように見えないのは迷光の影響もあるが、ミラーを固定する際にホルダー内で生じている歪みという可能性もある(変形しない程度に緩くしか締めていないが...)。

  • F/1 レーザー光源
    内挿したマップと、実際に半分のステップでスキャンしたマップにどの程度の違いがあるか確認するため、再度 F/1 光源を置いて半分のステップでスキャンしたものを、これまで使っていた内挿でステップ間隔を狭めた駆動マップで補正してみた。データ総数が変わると、全体の拡大率や回転角の決定に影響が出るため、その違いによる残差の変化が出ている感じだ。こちらの補正マップを使っても上記の結果には全く違いは見られなかったことは確認した(マップの中央付近しか使っていないので、周辺部まで使う場合でも確認が必要)。
    側面からセットスクリューで固定するタイプのホルダーに入れて、結構強く固定。焦点位置での確認でも3方向への変形が確認できたので、これで形状を調べてみる。

  • F/1 レーザー光源
    色々作業したので、とりあえずステージの駆動確認。以前の駆動マップ(内挿で半分のステップにしたもの)で補正すると更にずれが大きくなっている。全体の回転角も少しずつ大きくなってきているようだ。なにやら四重極風のずれが出ている。
  • F/1 レーザー光源
    ステップを半分にして連続で取得し、直前の結果を内挿したもので駆動補正をしてみたが、案の定ステップ数が増えると駆動結果に影響が出るようだ。
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。2つ上の F/1 レーザー光源の結果で補正したもの。
  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
    上記2つの結果から求めたミラー形状。3方向の変形がでているはずだがそうなっていない。迷光もあるのでやや怪しい感じ。下右図は -45mm での結果をステップ半分での F/1 レーザーのマップで補正したもの(この次の結果を見るとこちらが正しそう)。やはり周辺部の形状に 1μm レベルではあるが影響が出ている。

  • F/1 レーザー光源
    最後に取得したステップ半分のマップで補正したもの。ほぼ問題ない状態なので、前回のマップ取得時の連続測定中にステージ駆動パターンの変化が発生し(S,E ともに連続してある程度のずれが見られるのも関係しているかも)、その後は安定しているということが判明した。
  • F/1 レーザー光源
    ステップを半分にして連続取得。今度は安定しているので、駆動パターンの違いは挙動変化に関係ないことが確定した。前回と今回の違いは、直前に計測ユニット全体の高さを調節する z ステージの高さ調整を行っているかいないかで、カメラ周りの状態を変えると落ち着くのに半日程度はかかるという可能性はありそう。また、駆動パターンの変化はステージの動きではなく、カメラの首振り角の変化の可能性がより高まったので、カメラのケーブルに固定したファイバーを外した方が良さそうな感じだ。
  • F/1 レーザー光源
    半日置いて再度スキャン。今度は左に戻るたびに原点参照を行うようにしてみた。少なくとも、この半日間はこれまでになく安定している。やはり S E が中央と重なっている時の方が信頼度の高いデータが取得できている感じだ。
  • F/1 レーザー光源
    ステップを半分にして連続取得。少なくとも毎回原点参照しても悪いことは起きないことが確認できたので、今後は毎回原点参照することにする。ここまでの印象では、やはり、何か作業をすると直後のスキャンとその次のスキャンくらいまでは影響があり、その後触らなければ安定する感じだ。
    ファイバーやカメラのケーブルが原因となっていることはほぼ間違いないので、ファイバーとカメラのケーブルは別々にし、カメラのケーブルを柔らかいフラットケーブルに交換してみる(安定駆動できるかどうかやや心配だが)。ケーブルのカテゴリは不明。

  • F/1 レーザー光源
    ケーブル交換後半日置いてスキャン。直前のデータで補正しているが、作業したにもかかわらず非常に安定している。カメラの読み出しは問題なさそう。
  • F/1 レーザー光源
    ステップを半分にして連続取得。問題なし。直前のデータを内挿して作ったマップで補正しているが、これで十分そうだ。光源を20mm 遠ざけて撮れば、ゴミの位置が移動して正しい補正マップができそうなので試してみる。
  • F/1 レーザー光源
    光源を20mm遠ざけて連続スキャン。全体的に残差が大きくなっているが、光源の移動による微弱な光度ムラの変化が全体的に影響している事が原因。2つのマップを光量で重みを付けて平均化するのが良さそう。
    2つのマップを光量で重みを付けて平均化したマップを内挿でステップを半分にし、上記3つの結果を補正したものが下。大体うまくいっている感じ。補正マップは光源をできるだけ近づけて取得後、20mm 遠ざけてもう1度スキャンし、光量で重み平均したものを内挿で間隔半分にして使用するのが、時間的に最も効果のある補正マップの作り方と言えると思う。あとは、この補正マップがどの程度の期間有効かどうかだ(もちろんカメラには触らないものとして)。
  • 球面鏡(-45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。(スクリプトの不備で S マークなし)
  • 球面鏡(-35mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 35mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。(スクリプトの不備で S マークなし)
  • 球面鏡(-25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラから遠ざかる側に後退させてスキャンしたもの。
    上記の結果から求めたミラー形状。今度はちゃんと3方向の変形が出た。やはり、距離により若干の見え方の違いがある。変化は軸対称な感じなので、入射ファイバー直後にあるマイクロ凹レンズの球面収差の影響の可能性が高く、被検面が遠いほど影響は小さくなるはず。

    これまでの結果との比較のため、データ密度を 1/4 に減らした結果が以下。データの間隔が荒いと緩やかな凹凸が出にくくなる感じだ。

  • 球面鏡(+45mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 45mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。
  • 球面鏡(+25mm)
    球面鏡を曲率中心がカメラのピンホールから 25mm 鏡がカメラに近づく側に前進させてスキャンしたもの。
    スポットが1つしか戻らないという条件で迷光を除くことで解析できた。やはり、被検面が近づくと形状が急速に変わっていき、離れている方が正しい結果になっている感じだ。変化は軸対称ではないので、マイクロ凹レンズが軸ずれして若干コマを出していることが考えられるが、離れれば問題ないのでそのまま。

    これまでの結果との比較のため、データ密度を 1/4 に減らした結果が以下。

    ここまでの試験で確認できたことは、

  • ステージ駆動の不定性は固い LAN ケーブルが問題で、柔らかいものに交換し、固定することで解消された。

  • 距離による形状の変化はファイバーとピンホールの光学的位置関係のずれが原因で、マイクロ凹レンズによる影響も若干あるが、被検面が離れると問題ない。

  • ステージ駆動の補正マップは F/1 レーザー光源をスキャンすることで作成できる。光源内のごみの影響は、光源までの距離を変えてゴミを移動させ、面輝度で重みを付けて結果を平均化することでほぼ取り除くことができる。

    ということで、球面鏡を用いた駆動確認試験は終了し、バイコニックの形状計測に戻ることにする。


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