レーザー変位計試験報告2


キーエンスのレーザー変位計LT-9010の安定性を試験した結果の報告です。
要求性能:1時間でrms = 0.01 um 程度の安定性(室内の温度調整あり)

・実験内容

変位計出力値のドリフトがなくならないので
以下の写真のようにレーザー変位計を低熱膨張ガラス上に置き、距離一定とみなせる状態で基準面(アルミ蒸着した低熱膨張ガラス)を測定し続けました。
実験を行った恒温槽は25℃±0.1℃程度で安定するよう温度調整しました。
また温度特性を調べるため温度計を用いて温度を同時に測定しました。温度計の精度は±0.1℃、分解能1/16℃です。
データは変位計のスイッチを入れて実験装置を組み上げてから24時間経過した後からとり初めました。

実験セットの写真


実験結果

変位計出力値の時間変化


変位計の温度の時間変化


重ね表示


(*)LT9010のデータは1秒、温度データは1分でbinしてあります。

60時間経過してもドリフトは消えませんでしたが、変位計の出力値と温度には相関があるように見えます。

変位計の出力値を温度ごとにプロットしました。



温度と出力値の間にほぼ線形な相関が見られます。
試しに一時関数でfitした結果、傾きは 1.39um/℃となりました。fitした関数からのずれは0.04um(RMS)程度でした。
キーエンス資料によると温度特性は最大1.5um/℃ですので、この範囲には収まっています。


・まとめ
 わかったこと
レーザー変位計の出力値と温度にはほぼ線形の相関があった。
生の出力値にはドリフトが見られたが、温度で出力値を補償してやれば時間に対して安定となりドリフトを消すことができる。

・問題点と改善方策
 RMSの悪化
補正したデータにはレーザー変位計のエラーに温度計のエラーが乗っているので、短期でRMSを見ると生データより悪化している。ただしこれは温度計の(上記の一時関数で距離に換算した場合の)精度・分解能が悪いことが大きな原因であろう。分解能1/100℃の熱電対があるので、これで実験を行えばエラーは小さくなると見込まれる。また温度計自体の温度変動を抑える工夫をする。

 再現性の保証
再び同じ条件で実験と解析を行い、同値のパラメータが確認できるかの実験はまだ行っていない。追実験を行う予定。