レーザー変位計試験報告


キーエンスのレーザー変位計LT-9010の安定性を試験した結果の報告です。
要求性能:1時間でrms = 0.01 um 程度の安定性(室内の温度調整あり)

・2012年2月16日の実験 (実験の生データ 変位計出力値データ 温度データ *レーザー変位計の測定開始は2/15 18:32)
・2012年2月20日の実験 (実験の生データ 変位計出力値データ 温度データ *レーザー変位計の測定開始は2/17 16:24)
・2012年2月27日の実験 (実験の生データ 変位計出力値データ 温度データ *レーザー変位計の測定開始は2/24 20:26)
・まとめ

*実験の生データの見方
変位計出力値データは1列目が測定開始からの時間、2列目が変位計の出力値(V)となっています。どの実験もコンバージョンファクターは1.0um/Vです。
温度データは1列目が熱電対の温度を記録した時間(日時)、2列目以降が各チャンネルで測定された温度です。
測定開始からの時間と温度の記録は各実験の開始時刻から対応させてください。

・2012年2月16日の実験

以下の写真のようにレーザー変位計を低熱膨張ガラスに固定し、距離一定とみなせる状態で鉄ブロックの基準面を14時間測定し続けました。
実験を行った室内は±0.1℃程度で安定するよう温度調整しました。
また温度特性を調べるため熱電対を用いて温度を同時に測定しました。

実験セットの写真


実験ログ
2/15 17:37 変位計の電源を入れた。
2/15 18:30 実験セットを組み上げた。
2/15 18:32 変位計の出力値を記録開始した。
2/16 08:31 記録終了した。

実験結果

変位計出力値の時間変化


ch1の温度の時間変化


ch2~5の温度の時間変化


出力値の変動が温度によるものだとすると、ch1と強い相関があるように見えます。
変位計の出力値をV(t),ch1の温度をTch1(t)とし、定数a[um/℃]を仮定してf(t) = V (t)- a*Tch1(t)をプロットしてみました。


*適当にa=1としました。

生データよりは滑らかな形になりました。
見た目で判断したので温度の補正式と補正係数に根拠はありません。

・2012年2月20日の実験

2月16日の実験の結果、レーザー変位計の温度特性は気温よりレーザー変位計の温度が影響していそうだという見通しが立ちました。
そこで熱の影響を少なくするためレーザー変位計をアルミニウム板で挟み、2月16日のものと同様の実験を行いました。
以下の写真のようにレーザー変位計を低熱膨張ガラスに固定し、アルミニウム板で挟み、距離一定とみなせる状態で鉄ブロックの基準面を65時間測定し続けました。
実験を行った室内は±0.1℃程度で安定するよう温度調整しました。
熱電対を用いて温度を同時に測定しました。

実験セットの写真


実験ログ
2/17 15:54 変位計の電源を入れた。
2/17 16:13 実験セットを組み上げた。
2/17 16:24 変位計の出力値を記録開始した。
2/20 08:19 記録終了した。

実験結果

変位計出力値の時間変化


60時間経過しても出力値は一定にならず上昇し続けていたようです。

ch1〜ch5の温度の時間変化


変位計の出力値をV(t),ch1の温度をTch1(t)とし、定数a[um/℃]を仮定してf(t) = V - a*Tch1をプロットしてみました。


*適当にa=1としました。T

また2月16日と同じ測定開始から14時間程度の時間を切り出して比較してみました。

2/16の実験(アルミ板なし) 2/20の実験(アルミ板あり)

赤の線が変位計の出力値、緑の線がch1の温度変化です。
温度変化が抑えられたことで2/16の実験で見られた短い周期での出力値の変動は見られなくなったようです。

・2012年2月27日の実験

温度変化による出力値の変動が測定対象(鉄ブロック)の熱膨張である可能性を考え、測定対象を低熱膨張ガラスに変えて同様の試験を行いました。
以下の写真のようにレーザー変位計を低熱膨張ガラスに固定し、アルミニウム板で挟み、距離一定とみなせる状態で低熱膨張ガラスの基準面を65時間測定し続けました。
実験を行った室内は±0.1℃程度で安定するよう温度調整しました。
熱電対を用いて温度を同時に測定しました。

実験セットの写真


実験ログ
2/24 19:50 変位計の電源を入れた。
2/24 20:22 実験セットを組み上げた。
2/24 20:26 変位計の出力値を記録開始した。
2/27 08:28 記録終了した。

実験結果

変位計出力値の時間変化


60時間経過しても出力値は一定にならず上昇し続けたようです。

ch1〜ch5の温度の時間変化


変位計の出力値をV(t),ch1の温度をTch1(t)とし、定数a[um/℃]を仮定してf(t) = V - a*Tch1をプロットしてみました。


*適当にa=1としました。T

温度の変化量あたりの出力値の変化量は2月20日の実験も2月27日の実験も0.7um/℃程度で有意な違いは見られませんでした。
測定対象の熱膨張はほとんど関係ないようです。


これまでの実験について出力値から温度を差し引いて補正したものをexpでfitしてみました。(測定直後の10時間を除く)

2/20の実験(アルミ板あり 鉄ブロック測定) 2/27の実験(アルミ板あり 低熱膨張ガラス測定)
a = -0.0633654 a = -0.0350618

よく一致しているように見えますが時定数が倍近く違うので時間変化は同一ではないようです。(周囲の絶対温度が違ったからか?)


・まとめ
レーザー変位計の発熱が原因と思われる出力値の変動が見られた。これはレーザー変位計の温度によってある程度補正可能だと思われる。
レーザー変位計を立ち上げてから60時間以上経過しても出力値は一定とならず増え続けた。
温度補正込みでの出力値の安定性は、出力値の時間変化を指数関数と仮定した場合、約50時間でrms = 0.025 (um)となった。(2月27日の実験データ)
*ただし異なる二つの実験で見た場合、時間変化は指数関数で説明できるものの、パラメータは同一とはならなかった。また熱電対の絶対精度は試験していない。